映画『オッペンハイマー』を予備知識ゼロで観た私の、作品をより深く理解できるおすすめ鑑賞法_img0
『オッペンハイマー』(2023) 写真:Photoshot/アフロ

「原爆の父」と呼ばれるアメリカの物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーの人生を描いた映画『オッペンハイマー』が、紆余曲折あり、日本でもようやく今年3月末に公開されました。3時間の長編ということや、難解であることで知られるクリストファー・ノーラン監督作ということで腰が引けている方がいたら、「それでも劇場で観る価値がある作品です」とおすすめしたい。予備知識ゼロで行った私が、「映画『オッペンハイマー』をより深く理解するためのおすすめ鑑賞法」をご紹介します。
 

 


Xでは「予備知識がないと一度で理解するのは難しい映画」というレビューも見かけましたが、歴史に弱い私でも充分楽しめましたし、ノーラン作品の中ではかなりわかりやすい映画だと感じました。それはこの作品が時間や空間などの「概念」ではなく、実際に起きた「史実」をテーマにしているから。

観る前に知っておくべきは、映画がカラーパートとモノクロパートに分かれていること、カラーパートはオッペンハイマーの視点、モノクロパートはロバート・ダウニー・Jr.演じるアメリカ原子力委員会委員長ルイス・ストローズの視点から描いているということ。

さらにオッペンハイマーがスパイ容疑をかけられた際の聴聞会と、ルイス・ストローズの公聴会というふたつの時間軸に分かれているのが少々わかりづらいですが、それだけ抑えていれば、あとは事件の背景がわからなくても、ストーリーにグイグイ引き込まれていきます。

映画『オッペンハイマー』を予備知識ゼロで観た私の、作品をより深く理解できるおすすめ鑑賞法_img1
『オッペンハイマー』(2023) 写真:Photoshot/アフロ

実は私もこんな話題作なのに、実際観に行くまでには2ヶ月もかかってしまいました。テーマがテーマだけに、観るのに気力も体力も必要そうだなと思うと腰が重くなっていたのです。だけどNetflix制作のドラマ『三体』を観て、「今すぐ観たい!」となり翌日映画館へ。

『三体』は中国の作家・劉慈欣による世界的ベストセラー小説が原作で、これまで何度か映像化されてきたSF超大作。Netflix版は人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のスタッフが制作しており、全8話があっという間の面白さ。要約するとオックスフォード大卒の科学者が地球外生命体との頭脳勝負で地球を滅亡から救う話なのですが、なぜ『オッペンハイマー』と結びついたかというと、この作品が科学者の苦悩と戦争の本質について描いていたから。