もう一度愛を夢見る


「また誰かと出会って、愛せる自信がありません」

20代後半で人間関係と愛に疲れたわたし。恋をすると心がすり減る。ひたすら愛し、はてしなく努力した。それでも去っていく人の背なかを見ながら、何度も泣いた。

愛に年齢は関係ない。「若いきみにはわからない」という人もいるけれど。若くても誰かを愛しぬき、愛のために傷つくことはある。わたしは本気で愛に苦しんでいた。

大人といわれる年齢になっても、自分の心も他人の心もよくわからない。いくつもの恋を失い、運命の人だと信じた彼も去っていった。わたしは誓った。「未練がましい思いはもうたくさん。二度と誰も愛さない」と。

それなのに、愛はすぐにまた心の窓に降りそそぎ、夕日が空を赤く染めるようにわたしを照らすだろう。いつか本物の愛に出会えるのかな。夢見るわたしは、知っている。愛がふたたび訪れたなら、わたしはまたすべてを投げ出すだろう。その人を愛したい、愛されたいと願いながら。

 

 

恋はふたりだけのもの


そもそも結婚に興味はなかった。人間関係と恋に疲れていた彼とわたしは、ただ永く愛し合えることだけを願った。いまは、ふたりで歩む道が自然に想像できる。一生、このままの関係でもいい。「責任逃れ」と後ろ指をさされるかもしれないし、どんより落ち込んだ日にはキツい言葉に心が揺れるかもしれない。だけど、わたしたちは大丈夫。愛と信頼で結ばれているから。お互いを尊重し、たっぷり話し合って決めたことだから。恋はふたりのものであって、他の人のものではないから。

 

彼がこう言ったことがある。「きみと一緒にまた四季を過ごしたい」。その言葉を、わたしはこんなふうに受けとめた。「きみのいない明日は描けない。ぼくが思い描く未来には、いつもきみがいる。だから、ずっとそばにいてほしい。いつまでも一緒にいたい」。口べたな彼がひとことひとこと、心を込めて話す姿が、たまらなく愛おしかった。

恋はまるで、彼が隠した宝物をわたしが見つける宝探しのよう。愛、幸せ、喜び。うっかり見過ごしてしまいそうなものをすべて、彼が宝物に変えてくれた。ときにはわたしが宝箱を隠して、彼が探す。そんな特別な日常が大好き。結婚という形にこだわらず、自分たちを縛らず、わたしたちは自由に愛し合う。未来が不安なときもあるけれど、きっとふたりは大丈夫。いまのような時間、いまのような愛、どうかずっと終わらないで。


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『家にいるのに家に帰りたい』(&books/辰巳出版)クォン・ラビン:著
チョンオ:絵
桑畑優香:訳

BTSのVも読んだ!“わたしだけのために書いてくれたみたい”——韓国でも日本でも共感の声続々! 心に灯をともす癒やしの言葉たち。


構成/露木桃子

 

 
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