「人生100年時代」と言われて久しいですが、みなさんは自分が100歳になったときの姿を想像できますか? ほとんどの人が心身ともに健康で、かつ笑顔でいたいと願っているでしょうが、身近なところに見本となる人があまりいなくて実現できるかどうか不安になってしまいますよね。

そんなときぜひ手に取っていただきたいのが、美術家・篠田桃紅さんの著書『これでおしまい』です。今年3月に107年の生涯を終えた篠田さんが自身の人生観をつづった本書には、楽しく長生きするためのヒントとなる「金言」が詰まっています。

ただし、それらは決して優しいものではありません。ときに辛辣で耳が痛くなるようなものもありますが、どこかユーモラスで、次第にその小気味よさの虜になるでしょう。まさに「良薬は口に苦し」な本書の中身を、一部ご紹介いたします。

 

著者プロフィール
篠田桃紅(しのだ・とうこう)さん:
美術家・1913(大正2)年3月28日生まれ。5歳の頃から父に書の手ほどきを受け、桃紅という雅号が付けられた。戦後まもなく墨を用いた抽象表現という新たな芸術を切り拓く。1956年に単身渡米。ニューヨークの一流ギャラリーで作品の発表を続け、世界的な評価を得る。作品は国内外の美術館、海外王室、宮内庁、政府公共施設など数十ヵ所に収蔵されている。2021年3月1日永眠。著書に『百歳の力』(集英社新書)、『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』(幻冬舎)、『桃紅一〇五歳 好きなものと生きる』(世界文化社)など。

 

みんな誰だって一人──孤独と向き合う


人は結局孤独。一人。
人にわかってもらおうなんて甘えん坊はダメ。
誰もわかりっこない。

一人で生まれて一人で死ぬんだもの。
はっきりわかっているのに、「私は孤独」と言うのがおかしい。
当然すぎるほど当然。孤独に向き合っていないわね。
怖くて孤独に向き合えないのよ。

いつも誰々さんと一緒。何もかもみんなでやる。独立心を持たない。
甘えたような考えがとってもはびこっているのね。

三男四女きょうだいの第五子として旧満州・大連に生まれた篠田さんは、ハイカラな西洋文化に触れる一方、封建的な儒教の教えを重んじる父のもと「価値観が一様ではない少女時代」を過ごしました。ただ、この頃には既に自立心が芽生え、団体行動や規則に従うことに苦手意識を持っていたようです。しかし、周囲に迎合せず、自分の考えを貫こうとする彼女の行動は「わがまま」と捉えられ、学校の先生にいつも叱られていたのだとか。孤独と真正面から向き合うその勇敢さは、この頃から培われていたのかもしれませんね。

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凛とした佇まいに惚れる! 在りし日の篠田さん
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