床ずれはどこにできやすい?


床ずれは、皮膚が圧迫され、血行障害を起こして皮膚組織が侵されてしまった状態のこと。褥瘡(じょくそう)とも呼ばれ、寝たきりや麻痺がある人の介護においては気をつけるべきことの1つです。

床ずれができると当然痛みを感じ、病気も悪化してしまいます。怖いのは、床ずれは何かに触れるところであればどこにでもできる可能性があるということ。後頭部、肩、ひじ、腰骨、膝、くるぶし、かかと、座骨、尾てい骨など、骨が出っ張っている部分は特に注意が必要です。

また、皮膚の表面よりも、深部により強くダメージを受けるのが床ずれの特徴です。ひどくなると骨が見えてしまうこともありますし、治療の開始が遅れると治るまでにかなりの時間を要します。

「寝たきり」というと、自分の親には無縁だと思われるかもしれません。ですが床ずれは寝たきりの方だけでなく、高齢者の多くが悩まされている問題です。「寝たきりじゃないから大丈夫」と侮らず、「どこかしらの皮膚が赤くなったら要注意!」と思うようにしてみてください。

 


床ずれしやすい人とは


床ずれになりやすいのは、同じ姿勢で長時間寝たきりの方や、座りっぱなしの方です。その状態が長く続くと、体の一部が布団や椅子に触れて体重がかかり、皮膚が圧迫されて血の巡りが悪くなってしまいます。それ以外にも、寝具が硬い、縫い目やシワがこすれている、湿っている、汗や尿で不潔にしているといったことでも床ずれができやすくなります。

また、栄養状態が悪い衰弱時にも床ずれは起きやすくなります。心臓病などのむくみによって血流が悪くなっていたり、病気によって痛みを感じにくい人は、特に気をつける必要があります。
 

自宅でできる床ずれ予防


幸恵さんのお父さんのようにならないためにも、自宅でできる床ずれ予防法をご紹介しましょう。

①数時間に一度は体位変換を横になっている時は、2、3時間に一度身体の向きを変えましょう。

②起き上がっている時間を調整する圧迫を身体の一部に集中させないため、起き上がっている時間を長くすることも効果的です。食事はベッドの上でとらず、車いすに移乗するといった工夫も1つの方法です。

③栄養を十分にとる身体を健康な状態に保つには、十分な栄養をとることも重要です。たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどバランス良くとりましょう。特にたんぱく質は、傷を治すためには欠かせません。

④清潔な状態を保つ皮膚を清潔に保ち、乾燥しすぎないように保湿します。紙おむつを使用しているのであれば、通気性が良く吸収力の高い商品を選びましょう。

⑤早めに専門家の指導を受ける皮膚が赤くなった状態は床ずれの前兆です。圧迫を取り除いても消えないようであれば、早めに医師の診察を受けてください。

床ずれ予防については、日本褥瘡学会がパンフレットを発行しているので、こちらも参考にしてみてください。
 

床ずれになったら活用したい介護保険の「福祉用具貸与」


床ずれになってしまった時は、介護保険の福祉用具貸与を活用しましょう。介護保険における床ずれ防止用具・体位変換器(福祉用具)のレンタルは、要介護2以上の方が対象となります(各都道府県や市区町村によって認定区分が変わる場合もあります)。

圧迫対策に効果的な「床ずれ防止マットレス」は、エアマット、水・エア・ゲル・シリコン・ウレタンなどの全身用マットが福祉用具貸与の対象です。たとえば、マットレスにセンサーを内蔵したこちらの高機能エアマットレスは、購入すると20万円以上かかりますが、介護保険を使えば月に1000円程度の負担でレンタルできます。

空気パッドなどを身体の下に入れて体位を換える「体位変換器」も介護保険を使ってレンタルできます。なお、同じ体位変換器でも、体位を保持する目的のものは対象になりません。

体位変換の支えや皮膚の密着防止に役立つ「クッション(ピースパッド)」も福祉用具貸与の対象の1つです。大きさの異なるタイプを用意しておくと、より簡単に体位変換が行えます。

床ずれは、一度できると治すためにはさまざまなケアが必要になり、介護にも影響してきます。数年かけてようやく治るようなことにもなりかねないので、子世代は「同じ姿勢で居続けると床ずれになるかも」と意識しておいてみてはいかがでしょうか。
 


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 


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