ーー荻野をいじめる谷脇も、ちょっと擁護する言い方をすると、ある意味すごく一生懸命なんですよね。

ほんとそうだと思います。

 

ーーその谷脇によって荻野が苦しめられていく。その一方で、バイクの教習所で出会った美少女・南雲さんとどんどんいい感じになっていく。先の見えないジェットコースターのようなスリルを、荻野は無意識で楽しんでいる部分もあると思いますか?

荻野はすんごい嫌なんだと思います。ただ、おせっかいなんですよね。谷脇の彼女のアキコちゃんに頼まれて、失踪した谷脇を探す手伝いをすることに関しても、監督とも話したんですけど、本当はやりたくないんです。だけど、荻野の善意みたいなものがあって、中途半端に首を突っ込んでしまって、なんとかしようとあがけばあがくほど、どんどん悪化していく。

ーー雪だるま式に、危険がどんどん大きくなっていく。

だからタイトルが「シガテラ」なんだろうなって。ちょっとずつ毒されていく。

(※シガテラ=ある種の魚類が持つ毒素、またそれによって引き起こされる食中毒の総称)

ーー荻野の「南雲さん、○○かい?」といった特徴のある喋り方が台本にも生かされています。その言い回しに、醍醐さんは世代間ギャップや戸惑いみたいなものは感じましたか?

クランクインして3日目くらいまでは、監督含めて現場の全員で「これくらいかな?」「大丈夫かな?」と探り探りやっていたんですけど、今は何の違和感もなくやっています。

ーー荻野を演じる上で、演出家やプロデューサーと共有した方向性などはありますか?

どの物語にも共通していることですが、主人公は周りに引っ張られるから、一番感情の起伏が激しいポジションだと思うんです。だから結局は、周りから受けることが一番大切だなって、監督も僕も考えていました。もちろんキャラクター像や主軸みたいなものはガチッと自分の中で作り込んでいった上で、その場その場で、周りの方が投げてくるものを純粋に拾って、リアクションをしていこうという考え方です。テンション感については、最初の1週間くらいは、毎回いろんなキャラクターの方とお芝居をする前に、「ここはこれくらいのテンション感でいこう」という足し算引き算をして、全体のバランスを見ておきました。今はもう、特に意識せずにやれています。

ーー荻野は心の声、モノローグが饒舌です。そこが「シガテラ」の見どころですし、演じる上でポイントになると思うのですが、手応えはいかがですか?

 

実は、モノローグの台詞でも、周りに誰もいない場面では、独り言のように大きな声で喋ってます。最初は戸惑ったし、人前でこんなに大声を出すヤツなんていないだろうって思いました。ただ、荻野は常識人ではなくて、ある種ゾーンに入ってしまうと、本当に周りが見えなくなる。リミッターがカチッと外れるスイッチが1個あるんです。荻野が「うわわわわ」ってなったら、ひたすら目を見て喋る、距離感もバグる、という風にやっていったら、「なんでこれが成立できるのかなって思ったんだろう? 全然実写に落とし込めるじゃん!」と思うようになりました。

今朝、第1話のナレーション録りがあったので、まだ完成していない状態ではあるんですけど編集されたものを見たら、面白かったです。コメディー色も強いし、編集も素敵でしたし。自分で見て面白いってことは、きっと大丈夫なんだろうなって。

ーーということは、手応えありですね!

大丈夫でした(笑)! 現場では、自分の芝居のアプローチがこれで合ってるのかどうなのか、不安で不安でしょうがなかったんですけど、今朝監督と一緒に見て、「いけましたねえ〜」って(笑)。見る人によってどうなのかわかんないですけど、落とし込めました。僕がそう思ってないと駄目だろうなと思っています。