そして、いわゆる有名ガイドブックであるミシュランはあまり参考にしていません。というのも、Foodingのように新しいお店がタイムリーに掲載されるわけでもないですし、星付きレストランはそうそう行く機会がないからです。

建物はクラシックだけれどお店自体はカジュアル、というところが好き。

フランスに住む前は、三つ星レストランとはさぞかし素晴らしいのだろうと思い、頑張って行ったこともあります。でも、記憶に残っているのは、「あのお料理美味しかったなあ!」という思い出ではなく、「ものすごく高かったな」とか「お腹が苦しすぎて、最後は辛かった」といったことばかりで......。

 

フランスに来て1年目の語学学校では、とても尊敬できる先生に出会いました。もうすぐ定年を迎えるというその先生の発言で、そうなんだ! と驚いたのが「人生で一度も三つ星レストランには行ったことがない」。第1章で書いたように、一般的なフランス人はむやみにブランド製品を買ったりしないので、三つ星レストランに行くというのも、同じような感覚で「自分には必要なし」と捉えられていたのかもしれません。

そんな話を聞いてからは私も、三つ星レストランに行けば、素晴らしい料理とサービスが待っているのだろうとわかっていても、無理して行くことがなくなったのです。もちろんこれは、あくまでも私個人の考えなので、自分は楽しめるわ、という方はぜひぜひ行ってほしいですし、私も気負いなく三つ星レストランに行ける日がいつか来たらいいな〜とは思いますが。

誕生日に夫・ツーさんに連れて行ってもらった、一つ星レストランのQui plume la lune。繊細なお料理が少しずつ小さいポーションで出てくるのが良かったです。

ちなみに三つ星は行きませんが、「せっかくのパリだから、星付きレストランに行ってみたい」という友人には、最近一つ星を取ったレストランをおすすめすることが多いです。以前は星付きというと、ピシッとアイロンをかけられたテーブルクロスやナプキンで整えられたテーブルに、サービスも完璧、というイメージでした。でも最近の一つ星店は、気負いなく楽しめるカジュアルなお店も増えてきています。結局のところ、私は寛げて美味しく楽しく過ごせるお店が好きなのです。
 

撮影/Yas