外国人を排斥しようとする動きに思うこと

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ちなみに、日本における外国人労働者の数は、2022年に過去最高の182万人にのぼっています(厚生労働省「外国人雇用状況」の届出まとめより)。少子高齢化によって人手が不足している産業を、外国人労働者の人々が支えている日本においても、次の内田さんの言葉には考えさせられるものがあります。
 


故郷の大地は、もはや自力だけでは守れない。それは、農業に限ったことではない。土木建築業や外食産業、家事代行や清掃、高齢者や病人の介護など、多くの分野は外国人労働者の手を借りて成り立っている。私のミラノでの行きつけの青果店は、スリランカ人が経営している。スロベニアから来た女性が、上階に住む高齢者の車椅子を押す。いてくれて、よかった。

それなのに経済が困窮する今、自国の利益の妨げになる、と外国人をむやみに排斥しようとする動きがある。事情を抱え祖国を出た人たちが、どのような思いで異国の土を耕し、弱者の世話をし、他国の味作りに励んでいるのか。
――『イタリア暮らし』より(『日本経済新聞』2021年12月2日掲載のコラム「ありがとう」)

 


政治に対する国民の疲弊


ある時のコラム(『Webでも考える人』2018年2月23日「強烈な春一番」)では、イタリアで起きた2件の殺傷事件をもとに、国内に漂う「ただならぬ空気」についても触れています。

1件目は、18歳のイタリア人女性殺人事件について。当時の情報として、「容疑者として身柄を拘束されているのは、ナイジェリア国籍の男性29歳。過去に麻薬所持と売買のかどで逮捕歴がある、不法入国者である」と本書では記載しています。

2件目は、イタリア人男性が運転する車から発砲して、6人に重軽傷を負わせた事件について。アフリカ系の人々を狙い撃ちした発砲事件でした。逮捕された犯人が「新興のイタリア極右政党〈パウンドの家〉のシンパであり、逮捕時にイタリア国旗を背に翻しながらローマ式敬礼をし、『難民一掃のためにやった』と供述したため、世間は騒然となった」といいます。