「本当にこの世は、男と女がいたらカップルか夫婦に決まってるという仕様になっているんだねえ」


でね、一緒に旅した私たち4人ていうのは、女2、男2だったんですよ。そしたらチェックインの時に夫婦二組と思われたようです。私と女友達で一部屋、男友達二人で一部屋、って手続きしたんだけどな。荷物を運ぼうとしたスタッフさんは、私と女友達の荷物を同じ部屋に運んでほしいということがなかなかわからない。見かねた男友達が彼らの荷物をラゲッジカートから下ろしてようやく話が通じたのだけど、中年男女4人=夫婦二組っていうデフォルトで全てのマニュアルが組まれているのでしょうか。とても行き届いた丁寧なサービスのお宿だったのだけど、昔ながらのマニュアルだとジェンダー周りや家族観に関してはがっちり昭和なのかもしれないですね。ちなみに私たち4人、カップルでもありません。4人のうち3人は独身。恋愛関係はない。そういう旅もあるんです。

写真:Shutterstock

同室の女友達は、男性の友人と二人で楽しく旅をする人です。私も、一人旅で現地の男性と合流することがあります。二人で行動しただけで女性に恋愛感情があるとか性的同意を得られたと勘違いするような男性ばかりではないのです。信じられないという人は、だいぶ認知が歪んでいるか人間関係が偏っているので目を覚ましてください。「男が下心ゼロなはずないし、ヤレる可能性のない女と旅する意味がわからない」とかいう言説は滅んでほしい。人は性別が違っても、知的好奇心や共通の趣味で仲良くなれるものなんですよ。性愛抜きでも仲良くなれるのです。その方が人生が倍楽しくなります。友達になれる人数が倍になるということですから。

 

まあそんなわけで私たち4人は愉快に旅をしていたのですが、女友達と二人で部屋の窓から美しい庭園を眺めながら、「本当にこの世は、男と女がいたらカップルか夫婦に決まってるという仕様になっているんだねえ」とため息をついたのでした。

あ、男友達と一緒に風呂に入ったかって? 働き者の私たちが部屋で仕事を終えてから混浴露天に行ったら向こうも入っていたので、一緒になりましたよ。でもどなたかが想像するようなエロめのシチュエーションにはなりませんでした。まず肝心なのは「露出が多い=性的同意」ではない!! という大原則を200回ぐらい頭に叩き込むことです。その上で、露出が平気な人もそうでない人も安心してお湯に入れる温浴着があったらいいよねという話です。

もっとも、この話を別の女友達にしたら「いや温浴着や関係性がどうだろうとどんだけ風呂が広かろうと、男と同じ湯に入るなんてありえない! 無理」と言っていました。私の場合は以前にも小さな混浴温泉に行ったことがあり、そこでは男性ももっと安心設計の温浴着だったので、今回もきっとそうだろうという油断があったのは確かです。今回の宿は混浴のほかに、男女別の立派な温泉があります。たぶん、広大な露天風呂を作ってみたけど、これを男女交代制で回すのはあまりにも効率悪すぎるから着衣の混浴にしたよ! ってことではないかと思います。それこそ、夫婦やカップルが一緒に楽しめるように。

もし、これってひょっとしてうちの宿かしら……とお思いになった方は、是非とも男性用ペラパンを見直して、万人が安心できる露天風呂をご検討くださいませ。私たちのような異性の旅仲間もいますし、カップルの方々も異性同士とは限らないですから、色々な人がいる前提でよりおもてなしの幅を広げられたら、素敵ですよね。大きな露天風呂は最高に気持ちよかったので、また行きます!
 

 


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