“春ドラマでいちばん印象に残った作品”というテーマでこのコラムを書こうと思った時、いちばんに思い浮かんだのが6月25日に最終回を迎えた『だが、情熱はある』(日本テレビ系)でした。

『だが、情熱はある』(日本テレビ系)公式サイトより。

本作は、オードリーの若林正恭さんと、南海キャンディーズの山里亮太さんのエッセイをもとに、おふたりの人生をドラマ化したもの。人見知り、自意識過剰、劣等感、ネガティブ……。誰もが持っている負の感情を武器にしてきた青春の日々が描かれていました。本稿では、なぜこんなにも『だが、情熱はある』が心に刺さったのか? を分析していきたいと思います。

 

髙橋海人&森本慎太郎に、(いい意味で)裏切られた!


まず、若林さんを髙橋海人さんが、山里さんを森本慎太郎さんが演じると発表された時、一言目に「まじか」と思いました。というのも、最初に公開された4人の写真が、まったく似ていなかったから。髙橋さんはキラキラアイドル! って感じの金髪で、若林さんはちょっぴり冴えない感じのコーディネート。森本さんと山里さんは体格は似ているものの、顔つきはまったくちがう。「どっちがどっちを演じるんだっけ?」とごちゃごちゃになった人も多いのではないでしょうか。私は勝手に、ビジュアルは似せずに臨むのだろうなぁと思っていました。

しかし、第1弾のティザー映像を観た時に、「えっ、似ている……」と驚かされました。森本さんは、“山ちゃん”のトレードマークである赤メガネをつけていて、髙橋さんはちょいと自信なさげな雰囲気が若林さんにそっくり。正直なところ、「ジャニーズがここまでやるのか!」と。

ステージ上でアイドルとして“かっこいい”を体現しているおふたりが、“かっこよくない”に本気で挑んでいる姿。それだけでなく、声質までご本人に似せている。その後、バラエティ番組などで髙橋さんと森本さんがしゃべっている姿を見ては、「若林さんみあるな……」「うわ、今の山ちゃんっぽい!」と思ったことが何度もありました。きっと、生活に介入するほど没頭して役作りをしていたのだろうなぁ。おふたりの演技力があったからこそ、違和感なく物語にスッと入り込めたのだと思います。