ーー國矢さん、蔦之助さんは、最初に『刀剣乱舞』と聞いた時にどう思われましたか。

澤村國矢(以下、國矢) 『刀剣乱舞』のキャラクターには歌舞伎とゆかりのある人物がいたり、そもそも刀自体も歌舞伎と繋がりの深いものですし。親和性は高いなと思ったので、作りようにもよりますが、これまでの新作よりも歌舞伎にしやすいなという気はしましたね。

市川蔦之助(以下、蔦之助) すでに舞台にもミュージカルにもなっている作品なので、その意味でも歌舞伎にしかできないことをやらなくてはいけない。そういう点で、さっき國矢さんも言ったように親和性というのは思いましたよね。新作歌舞伎もいろいろ作っていますが、世界観という点では一番合うんじゃないでしょうか。

歌舞伎の「難しさ」を避けて、ただ観やすくするのでは意味がない

 

ーー松也さんは今作で初めて演出も手がけています。公式サイトには【古典歌舞伎の魅力がふんだんに盛り込まれた】とありますが、これは具体的にはどういったことでしょうか。

松也 古典演目のあらすじの一部などそういったことではなくて、古典演目で用いる演出技法ですね。あとはできるだけ映像などは使わずに、照明と光線のみで見せる。歌舞伎ならではの演出や表現方法にこだわるということです。

 

もちろん、ツケ(木を打って大きな音を出す、歌舞伎独特の演出法)を使わなければ歌舞伎ではないなんて定義はありませんし、踊りが、義太夫がなければ歌舞伎ではないなんてことにもならない。基本的には、我々が歌舞伎と思っていれば歌舞伎、という感覚です。ですがやはりこれだけの人気コンテンツで、これまで歌舞伎を観たことない方に観ていただけるチャンスですから。

みなさんが歌舞伎と聞いてまず一番に思い浮かべるのは「堅苦しい」とか「難しい」といったことだと思うのですが、だからこそ、それを避けてただ観やすくするのでは意味がない。そうした固定観念を、この物語とコンテンツを通してどうやって取っ払っていくか。それはお客様だけでなく僕たち自身にも学びがあると思いましたし。

みなさんが難しいと思う要素も僕らは素晴らしい、面白いと思っていますから、わかりやすく噛み砕いて形を少し変えればきっとみなさんにも伝わるし、“歌舞伎ってこんなに面白いんだ”と思ってもらえる。歌舞伎を観たことない方には『刀剣乱舞』を通じてこうした魅力を知っていただきたかったですし、観たことがある方には、ゲームが題材の新作でこれだけできる、古典の通し狂言のような要素で今でも作ることが出来るんだってことを感じてほしかった。これが今回のコンセプトですね。