結婚後も、静江さんはそれまでとは変わらず終電近くまで働きました。しかしコロナ禍でリモートワークが普及したことで、夫婦で一緒にいる時間が増えた。そこから将来が不安になったと言います。

「子どもがいないのもあって、二人でいても子どもの入学式とか卒業というような区切りや季節性がないんです。このままずっと子どもを持たないままで歳を取っていくのか……と思うと、果たして一緒にいる意味はあるのかと考えてしまう時もあります」

静江さんは、婦人科系の疾患なども無く健康上に問題はありません。ただ、地方出身で親も70代と高齢のため頼れそうになく、働きながら夫婦のみで出産や育児をすることは難しそうだな……と、「子無し」の人生を選んできました。

「数年前、“選択的子なし”という言葉を知りました。定義を見ていると自分が当てはまると思いましたね。今はやりたい仕事も充実しているし、同じように働いていてちょっと高価な店に飲みに行ける友人もいる。これが子どもを産んだりしたら、これまでどおりには働くことができない。お金も自分に自由に使えなくなる。夫には昔から“仕事をしたい”と伝えていたから、私は子無しの生き方を選んでいること、理解してくれていると思っていたんです」

 

38歳。子どもを望むならタイムリミットが近づいている


静江さんは自ら「産まない」と決めていましたが、いざ38歳という年齢に差し掛かり出産のリミットを感じるなか、SNSなどで友人が妊娠や出産をしているのを見ると、内心迷いも生じるそうです。

 

「最近、芸能人の男性タレントが40代でパパになったニュースが相次いだのを見て夫が、“もしも自然に任せてできたら産もう”と言ってきたんです。夫は、最初の頃は私と同じで“子どもはいなくてもいい”と言っていた。夫婦で同じ考えと思っていたのに、周りに子持ちが増えたのを見て考えが変わってきたようで……、なんだかモヤモヤしました。だって子どもを産むとなったら、仕事を休んだり時短になったりと、影響が出るのは明らかに私の方。私の年齢的リミットが近づく中で、夫が“やっぱり子どもが欲しい”と内心思い始めてしまった、というのはわかるんです。けれど、やはり自分にとっては“子無し”という選択の方がメリットを感じてしまうんです」

静江さんは、未婚の女友達が「子どもが欲しいから結婚したい」といって婚活をしているのを見ると、自分の判断が正しいのか悩んでしまいます。