介護保険が適用されるサービスとは?


まず「有料老人ホームの利用にも介護保険は使えるの?」という疑問ですが、結論から言うと介護保険は使えます。介護保険は国の制度ですが、民間が運営する有料老人ホームでも、介護保険の特定施設入居者生活介護の要件を満たした施設であれば、要介護度に応じて介護保険が適用されます。

具体的には、入浴・排泄介助、食事の介助や機能訓練、生活支援などが介護保険の対象となり、1〜3割の自己負担で利用できます。一方、居住費や食費、日常生活に必要な雑費などは適用範囲外となり、全額自己負担となります。

 

3種類の有料老人ホームで異なる介護保険適用


相談者の美紀子さんもご存知なかったようですが、民間が運営する有料老人ホームには、そもそも「①介護付き有料老人ホーム」、「②住宅型有料老人ホーム」、「③健康型有料老人ホーム」の3種類があり、その違いは、提供される介護サービスの内容です。

利用条件や受け入れ可能な要介護認定レベルもそれぞれ異なるため、介護保険が適用されるサービスにも違いがあります。いざという時のためにも、その内容を詳しく見ていきましょう。

 ①介護付き有料老人ホーム【ホームが介護サービスを提供/24万6030室】
要介護1以上の入居者が多く、介護が必要な高齢者が介護サービスや生活支援サービスを受けながら生活する施設。ここで提供される食事介助や入浴・排泄介助などの介護サービス、機能訓練などは、介護保険が適用されます。

 ②住宅型有料老人ホーム【外部の介護サービスを利用/30万7909室】
自立~要支援の入居者が多く、要介護認定を受けた方と自立している方の両方を入居対象にしている近年急増中の施設。ただし、ここで提供される生活支援サービスには介護保険は適用されません。また、施設側では介護サービスを提供していないため、必要な方は別途外部の事業所と契約する必要があります。ここに関しては介護保険の利用が可能です。

 ③健康型有料老人ホーム【介護サービスを必要としない自立者が対象/415室】
自立した高齢者が食事や生活サポートなどを受けられる施設。「健康型」という名称の通り自立が入居対象で、要介護認定を受けた方は入居できません。ここでは基本的に介護保険が適用されるサービスはなく、要介護になった場合は退去となります。

このように、介護保険はすべての有料老人ホームの入居者に適用されるものではありません。住宅型や健康型は、施設利用に対してはカバーされない点に注意してください。

なお、それぞれのホームの2022年4月時点での居室(床)数も記載しました(長谷工総合研究所作成「高齢者向け住まい等の紹介事業のあり方について」より)。これを見ると、「介護付き」と「住宅型」が、有料老人ホーム全体の約半数ずつを占めていることがわかります。
 

必要以上のサービスは介護保険適用外


老人ホームの多くは、さらに「上乗せサービス」や「横出しサービス」と呼ばれる独自の介護サービスを提供しています。これらの費用に関しては、介護保険は適用されません。

 

これらの付加的サービスは、必要な人とそうでない人がいます。必要ない場合は、その分リーズナブルな施設を探せるということになります。
 

介護認定者は「介護付き」と「住宅型」のどちらがベスト?


では、介護認定を受けた方は、「介護付き」と「住宅型」のどちらを選ぶのが良いのでしょうか。

まず「介護付き有料老人ホーム」は、24時間365日体制で手厚いケアを受けられます。入居費用は高めですが、介護サービス費は要介護度に応じた月額制なので、高額になる心配はありません。ですが逆に、利用頻度に関係なく一定の介護サービス費が発生したり、外部の介護サービスは基本的に利用できないなど、デメリットもあります。

「住宅型有料老人ホーム」は、施設による介護サービスの提供はありませんが、行動制限が少なく、日々のレクリエーションやイベント企画に力を入れている施設が多数です。要支援の段階であれば特に外部の介護サービスは使わず生活できるので、要介護度が低い人は費用を抑えられるという特徴があります。また、母体によっては「介護付き」と「住宅型」の両方を経営していることもあり、介護度が高くなったら住宅型から介護付きへ移ることも可能です。

介護をするにあたっては、ご家庭ごとに予算があるはずです。月額費用や介護保険が適用される上限も考慮して、予算内でベストな老人ホームを見つけてみてください。
 


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

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