9月1日公開の映画『バカ塗りの娘』で、家族のあり方に葛藤する不器用な父親を演じた小林薫さん。私生活でも“息子を持つ父親”である小林さんが、今作で大切にしたこととは。さらに若い世代と仕事をする時の心構えなど、率直な気持ちを話してくれました。

 

指導を受けて「こんなに大変な作業をやってんだ」と


ーー『バカ塗りの娘』は、主人公の美也子(堀田真由)が自分のやりたいことを決断し、チャレンジする姿が描かれます。小林さんが演じる清史郎は美也子の父親で、津軽塗の職人です。2人で津軽塗を制作するシーンがこの映画を見る大きな理由になっていました。小林さんは、津軽塗についてどれくらいご存知でしたか?

何も知らない世界なんで、全くわかってなかったと思います。例えば輪島塗とどういう違いがあるのかっていうことさえわかってなくて。監督からは、「塗りの工程が多い漆器なんですよ」という話を聞いていたくらいですかね。現場で職人さんから指導を受けて、「あ、こんなに大変な作業をやってんだ」と知ったぐらいです。

ーー津軽塗は、バカみたいに何度も塗るから“バカ塗り”ともいわれるそうですね。小林さんは、津軽塗のどんなところに魅力を感じましたか?

デザインがものすごく多いんですよね。他の漆器にはない味わいのものにはなっているんですけど、津軽塗はそもそも献上品だから、今の若い人の生活スタイルには重いのかなと……。

ーー漆器は会席料理やお重のイメージがあるので、日常使いにはハードルが高いですよね。

お重なんて、例えば自分が独立して家庭を持って、年に1回くらいおせち料理を出さなきゃと思って買ったとして、それ以外は寝かせるかもしれないと思うと、持ちづらいですよね。今多分、漆器の世界は大変だと思うんですよね。魅力はすごくあるので、若い人に使ってもらうには、プロデュースする人やディレクトできる人が必要なんじゃないでしょうか。

ーー変わっていってもいいのではないかと。

そうそう。そうすると保守的な人は「それは津軽塗じゃない」となっちゃうかもしれないけれど、デザイン性を打ち出せるものなんだから、型にはまらないで、どんどんいろんな漆器が出てきたら、津軽塗がもっと広がっていく道もあるのかなと思います。


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