8月8日(火)に開幕する舞台『桜の園』に出演する、女優の原田美枝子さん。夫と息子を失った悲しみに囚われ、目の前の現実と向き合えずにいる“桜の園”の女主人・ラネーフスカヤを演じます。

急激な時代の変化の中でなんとか変わろうとしていく人々と、過去にすがり続ける人々。私たちの生きる時代と重なる部分も多いこの作品に、どんな思いで臨むのか。自身の半生を振り返る質問にも、真摯に答えてくださいました。

 

ーーロシアを代表する劇作家による、大きな時代の転換点を舞台にした作品を今、このタイミングで上演することの意義をつい考えてしまいます。

私自身はチェーホフの作品はすごく好きです。『かもめ』と『三人姉妹』という2つの作品を、蜷川幸雄さんの演出でずいぶん前にやらせていただきましたが、チェーホフの作品はただ脚本を読むより演じるほうが、一つひとつのセリフのよさがわかるんですよね。

『三人姉妹』も今回の『桜の園』と同じく、ロシアのある家族に起きるこまごまとした変化を描いた作品ですが、その中ですごく好きだったのが、

“私たちがこんなに大変な思いをしていることを、100年後の人たちはどう乗り越えていくのだろう。彼らは私たちにとって希望だけれど、彼らから見た私たちは希望になっているのだろうか”

という言葉です。こうしたセリフは『桜の園』にも出てきます。作品が生まれてから120年後の私たちは果たして乗り越えられているんだろうか、未来になっているだろうかと考えるし、あるいは、120年前の彼らが一生懸命に生きてくれたからこそ今の私たちがあるんだという気持ちにもなる。素敵なセリフがあちこちに散りばめられていて、チェーホフには、そういう魅力があるんです。

ーーそうした言葉は、変化の激しい時代を生きる現代の私たちにとっても励みになりそうですね。

そう思いますね。歴史を振り返れば、ロシアに限らず日本も、世界中どこの国だって、何もなく完璧に幸せだった時代なんてないんですよね。国や文化に関係なく、困難に直面した時に人はどう生きていくか。チェーホフはそういうことを描いていると思います。
 

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【写真】原田美枝子さん、凛とした表情がかっこいい!
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