「レカネマブ」の効果とは? 臨床試験の驚きの結果


山田:薬といえば、飲み薬をイメージする方も多いかもしれませんが、一般的に抗体を用いた薬剤は注射が必要になります。

編集:なるほど! ちなみに、効果や副作用について、現時点ではどのようなことがわかっているのでしょうか?

山田:この薬剤の承認にあたり、18ヵ月に渡る臨床試験が行われました。結果をみてみると、レカネマブを投与された人の脳で、肝心のアミロイドβは確かに著しく減少していることが確認できました。脳の中のゴミが綺麗さっぱりなくなった、というイメージです。

編集:それはすごいですね! 

 

山田:ただ、期待されたような認知機能の回復は見られず、残念ながらレカネマブを投与した人たちでも認知症には確実な進行が見られていました。しかし、偽薬の投与を受けた人と比較すると、レカネマブを投与された人で、その進行が27%遅くなっていました。認知機能の「差」で見てみると、これまで使われてきたより安価な飲み薬で実現してきた「差」と大きな違いはありませんでした。これがこの薬の「有効性」ということになりますが、残念ながら期待されていたほど大きな差ではなかった、と言わざるをえないでしょう。

編集:そうなのですね……。

山田:薬を投与した時期が遅すぎたかもしれませんし、アミロイドβ以外の原因で病状が進行してしまった、という可能性も十分考えられます。いずれにせよ、進行をわずかに遅くしただけで、改善は見られなかった、という結果となりました。

編集:なるほど……。もっと早い段階で薬を投与したら認知機能の回復が見られるかもしれない、とか、予防できるかもしれない、ということがわかるようになるのは、まだ先のことなのですね。

山田:そうですね。将来的には、認知症の症状が出る前に接種し発症を予防するワクチンの開発なども期待されますが、前述した通り、アルツハイマー病の進行はアミロイドβだけでは説明できない可能性が高いので、あまりアミロイドβだけにとらわれず、広く冷静な視点が必要になるのかな、と思います。

編集:「レカネマブ」の効果はイメージできました! ちなみに、副作用などはあるのでしょうか?