介護で発生する3つの臭いトラブル


臭いに関するトラブルは、相談者の加奈子さん宅に限ったことではありません。わたし、渋澤が母を自宅で介護していた頃、一番の悩みは尿臭・便臭でした。母は認知症だったので、便の付着したズボンを仏壇に入れてしまって原因不明の悪臭が漂ったり、部屋で失禁をしてカーペットに臭いが付着するなど、あらゆる事件が勃発。掃除や洗濯をしても何となく臭いは残るもので、食事のときも吐き気がしたほどです。

在宅介護では、臭いに関するトラブルは比較的多く見られ、次のようなものがあります。

トラブル① 排泄物による臭い
介護者がトイレの手伝いをしているときや、オムツ替えなどで軟便や失禁をしてしまうと、強い臭いが発生します。部屋に便臭や尿臭が漂う原因は、おむつやポータブルトイレを使用していることがほとんど。特にポータブルトイレは、使用後すぐに処理をしないと部屋中に臭いが充満してしまいます。

トラブル② 身体から発生する臭い
高齢者は、健康状態や食生活によって口臭や体臭(汗臭・加齢臭)が強くなる傾向があります。加齢や薬の副作用などによって唾液の分泌量が減少し、口の中の細菌が増えやすくなりますが、この細菌の増加によって口臭が発生するのです。また、口の中に食べカスが残ることも一因と考えられます。

体臭に関しては若い方にも言えることですが、汗をかいたままの状態で放置していると、当然臭いが発生します。これに加えて、年齢を重ねると脂肪酸や過酸化脂質といった物質の分泌量が増え、体臭が発生しやすくなります。いずれも毎日入浴すれば回避できますが、在宅介護ではこの「毎日入浴」がだんだんと難しくなり、雑菌の繁殖と共に臭いが強くなってしまうのです。

トラブル③ 居室内や衣服・寝具による臭い
在宅介護では、高齢者の居室内や衣服などにも臭いが付きやすくなります。特に体調が悪いときや汗をかいたときなどの臭いは気になる場合があります。排泄物がついたままになっている、汗をかいたまま放置している、食べこぼしで汚れている、といったことが原因です。

 

臭いを退治する方法は?


ここで臭いを撃退する方法をいくつかご紹介しておきます。

対策① 排泄物による臭いの対処法
おむつを使用している場合、使用済みのものはビニール袋を二重にしたり、新聞紙などに包んでから袋に入れると臭いが広がりにくくなります。ポータブルトイレを使用している場合は、使用したらすぐに片付けることが大切。また、天気の良い日は洗浄し、乾燥させることで臭いが軽減されます。

対策② 身体から発生する臭いへの対処
介護状態になると歯磨きなどがおろそかになりがちですが、口腔ケアによって口臭はずいぶんと抑えられます。ポイントは、舌ブラシやスポンジブラシを利用すること。汗臭や加齢臭などの体臭は、こまめに汗を拭き、入浴の回数を増やすことが最も効果的です。精油やアロマオイルを湯に含ませると、リフレッシュにもなります。

対策③ 居室内や衣服・寝具による臭い
居室内はこまめな換気が一番。とにかく空気を循環させることが大切です。臭いは放っておくと付着してしまうので、梅雨時期などは空気清浄機も有効です。汚れた衣服や寝具は溜め込むと臭いがついてしまいます。放っておくと雑菌も繁殖するので、こまめに洗濯することをお勧めします。

また、汗臭や加齢臭などの体臭、口臭、排泄臭は、食生活である程度改善される場合もあります。肉や卵、動物性脂質(チーズ、牛乳)、にんにく、香辛料、ネギ・ニラなどは、量を多く摂ると臭いの原因となることも。ですがあまり気にしすぎる必要もなく、栄養バランスの取れた食事を心掛ければ問題ありません。

重曹で消臭効果!


渋澤もニオイ問題に悩まされたと前述しましたが、そんなとき多少なりとも役に立ったのが重曹です。重曹はアルカリ性なので、酸性の臭いを中和することができます。また重曹に含まれる成分が細菌を減らし、臭いの元を減らす効果もあるのです。

重曹を使う場合は、ぜひ以下のような使い方をしてみてください。

 

介護に限らず、40代以降は多少なりとも加齢臭が発生しますし、汗で湿った靴などを置きっ放しにすることで玄関に臭いが立ち込めることも。明日からできる対策として、簡単な方法もご紹介します。くれぐれも、タオルを振り回すのであれば周囲に注意し、マッチも適切に処分してくださいね。

 

介護用消臭剤は、花王やエステーなどのメーカーからも発売されています。ただし介護はとてもお金がかかるもの。以前、こちらの記事で100円ショップで購入できる介護グッズを紹介しましたが、芳香剤や消臭剤の品揃えも豊富です。生活の中で、工夫をしながら節約していける知恵もつけたいものですね。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

前回記事「公的年金だけでは老後は不安...!そんな時に検討したい「個人年金保険」とは」>>

 
 
 
  • 1
  • 2