この夏は季節外れのインフルエンザだけでなく、様々な風邪の感染流行が話題となりました。ところで、風邪やインフルエンザの治療に、「抗生物質」は効果的なのでしょうか? 多くの人が誤解している「抗菌薬」、正しい服用方法や「耐性菌」の問題について、山田悠史先生に聞きました。

教えていただいたのは……

 

山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビライブニュースαレギュラーコメンテーター、NewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)、コロナワクチンの正しい知識の普及を行うコロワくんサポーターズの代表。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
Twitter:@YujiY0402

 


山田:今日はまず、質問をしたいと思います。風邪やインフルエンザの症状に、抗菌薬は効果的だと思いますか?

編集:えっと……普通に効く、と考えていましたが、どうやら間違っていそうですね……?

山田:そうなんです。実は、風邪やインフルエンザに対して抗菌薬を処方しても、全く効果がありません。そもそも多くの風邪やインフルエンザはウイルスの感染症で、抗菌薬は細菌に効くお薬ですから、ウイルスには無効です。

編集:なるほど! まず、「ウイルス」と「細菌」が違うもので、それぞれに効果のあるお薬が違う、ということがきちんと理解できていなかったので、その延長線上で誤解していました。

ちなみに、「抗生物質」と「抗菌薬」って両方よく聞きますが、違うものなのでしょうか?

山田:抗生物質は、抗菌薬のうち、微生物から作られるものだけを指します。抗菌薬には、化学的に作られるものもあるので、細菌に対する薬を総称するなら厳密には抗菌薬という言葉がより適切ですね。

編集:なるほど、そうだったのですね! その抗菌薬ですが、風邪の時に処方されることも普通にありますし、仮に服用したとしても、特に問題はないと思うのですが、違いますか……?