骨密度を上げられるのは成長期だけ。では更年期世代ができることは?

 

これは、女性の骨量の変化と女性ホルモン(エストロゲン)の変化を図に示したもの。

この図のとおり、骨量は10代の成長期にぐっと増え、20歳ごろにピークを迎えます。骨を維持する作用がある女性ホルモンのはたらきによって。40代後半くらいまでゆるやかに維持ができるものの、閉経を境にガクッと骨量が減少することがわかります。閉経前後で、実に20%ほどの骨量が低下してしまうのです。

つまり、骨量・骨密度は成長期のうちにどれだけ高く山をつくれるかが何より大切。20代での骨量のピークが低いと、50代で骨減少症になり、60歳で骨粗しょう症になってしまうと予測できます。

 


「自分は骨折などもしたことがないし、骨は強いはずだ」という過信は禁物です。

最近、この連載の担当編集者さん(40歳)が骨密度の検査に行ったそうなのですが、結果はなんと60歳相当の骨量・骨密度で、骨粗しょう症予備軍の一歩手前だったそうです。特に成長期に過剰なダイエットをしたこともなく、運動もそれなりにしていた様子。「20代のときの徹夜仕事と不摂生がたたっている気がします……」と肩を落としています。

もう骨量が増やせない年齢になってから、骨粗しょう症リスクが高いことがわかった場合はどうしたらいいのでしょうか? 

「大人になってからできることは、運動と食事で骨密度が減るカーブをなだらかにすること。成長期のように骨量・骨密度を増やすことはできませんが、これ以上下げないようにすることはできます。

それでも、骨粗しょう症になってしまったら治療が必要です。
閉経後の骨粗しょう症の原因は、女性ホルモン欠乏症。エストロゲンを補充したり、骨粗しょう症の薬を服用・注射したりすることで骨量の減少を食い止めたり、骨密度を上げることもできます。ただし、それらの治療をやめるとまた骨は減少してしまうので継続治療が必要になります」

顔の老化防止に加え、将来の骨折リスクを減らし、いつまでも自分の脚で歩く健康寿命を延ばすためには骨の健康は欠かせません。今あなたが何歳であろうと、自分の骨量・骨密度を知り、積極的に対策をすることで、将来は大きく変わってくるのです。

同時に、骨を育てて積み上げられる若い世代に骨の重要性を伝えていくことも大切だと考えさせられました。若い時期に見た目を気にしすぎて無理なダイエットをすると、骨量を積み上げられず、歳を重ねたときに人より早く老けこんでしまったり、骨折して寝たきりになるリスクも高まります。

骨が女性の一生に及ぼす影響を若いうちから知り、備えることが必要だと思います。
 

 

矢吹 有里(Yuri Yabuki)
ゆりクリニック院長。東京女子医科大学を卒業後、慶應義塾大学整形外科医局に入局、関連の急性期病院で整形外科全般の治療に携わったのち、東京都済生会中央病院整形外科医長に。整形外科疾患の中にも女性特有のものが多く存在することを実感し、2017年に女性専門の整形外科「ゆりクリニック」を開院。運動器リハビリテーションから体力維持のためのトレーニングまで、女性の健康に寄り添うほか、「骨美容
®」を提唱し、若い世代からの骨密度維持の大切さを啓発している。


取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣

 

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