一度も笑顔を見せない主人公をめぐる人間関係。でもオフの雰囲気は楽しい撮影現場に


——9月に配信が始まった『最悪の悪』。敵同士でありながら次第に不思議な絆で結ばれてゆくジュンモとギチョル、二人への思いと職務の間に立たされるウィジョンに、今にもバレそうな秘密など、毎回息を呑むようにドラマを見ている人も多いはず。そんなドラマと裏腹に、目の前にいる3人には拍子抜けするほど和気あいあいの空気に包まれています。

ウィ・ハジュンさん(以下、ウィ・ハジュン):そもそも僕にとっての撮影現場はいつも「仕事場」で、常にプレッシャーを感じる場所。だから現場を楽しいと思ったことなんて一度もなかったんですーーこの作品の前までは。『最悪の悪』では、監督、キャスト、スタッフの皆さんと息がぴったりで、「現場ってこんなにも楽しい場所だったんだ」と気づかせてくれた作品です。ドラマ自体は緊迫感の連続ですが、カメラがオフになった時はみんなでふざけ合ったり、冗談を言い合うような現場でしたね。

——作品の見どころのひとつは、ウィジョンを間にはさんで向かい合う、ジュンモとギチョルの関係です。不遇な家庭環境と荒れた青春をたどった末に、それぞれ警官と犯罪組織のリーダーになった二人は、合わせ鏡のような存在です。ギチョルの思いを利用してジュンモを守るウィジョンは、それゆえにギチョルも気にかけずにはいられません。演じるイム・セミさんは、そんな役柄を「全く新しい経験だった」と語ります。

イム・セミさん(以下、イム・セミ):二人の男性の間で様々な感情を覚えながら葛藤するウィジョンのような人物を演じるのは初めてだし、ずっと演じてみたかったんです。そういう状況に置かれたら、自分ならどうするだろう?とすごく考えました。現実ではなかなか起こり得ないことですし、感情の奥底が絶えず落ち着かないような、演技だからこそできる新しい体験は楽しかったし、ゾクゾクしましね。

 

——一方、正義と信じるものを目指しながら次第に悪にまみれてゆくジュンモは、これまで「キラキラした主人公」を多く演じてきたチ・チャンウクさんにとっても、新しい経験が多かったのだとか。

チ・チャンウクさん(以下、チ・チャンウク):キラキラしていない役もそれなりにやってきたと思うんですが、多くの人に新鮮に捉えていただいているみたいで。

 

イム・セミ:確かにチャンウクさんは作品の中で一度も笑顔を見せなかったですよね。

チ・チャンウク:最近の出演作では、自分の中の新しい感情や、思わぬ反応を見出すような体験が多いんです。今回のドラマでも、例えば、自分を正当化してゆくプロセスやそこで生まれる感情、そんな自分を責めるような気持ちを経験し、自分にもこんな面があるのかと思いましたね。