「繊細さんってどこまでが遺伝なの?」という疑問

 

武田 繊細さんってどこまでが遺伝なの? と聞かれることがあるんですが、イギリスで生まれたHSC(子どものHSP)の双子約2800名を調査したところ、17歳の時点で、環境感受性に対する遺伝の影響が47%という研究があります(論文1)。これは一卵性双生児(ほぼ100%同じ遺伝子を持っている)と二卵性双生児(およそ50%同じ遺伝子を持っている)の双子を比較することで遺伝の影響を見るものです。ただ、性格に対する遺伝の影響は50%程度と言われていますから、特別高い割合というわけではないようです。

 

他にも遺伝に関して言うと、HSPと非HSPでは遺伝子型にちがいがあるという研究があります。HSPは、セロトニントランスポーター遺伝子(ストレスを軽減させる脳内物質であるセロトニンの伝達に関係する遺伝情報が書き込まれた遺伝子)の型が5-HTTLPRという型で、ドーパミン制御遺伝子の変異にも関連があるのだそうです(論文2)

ただ、遺伝子って、特定の遺伝子があればただちにそうなるというものではなく、複数の遺伝子が関わっていたり、環境の影響によって遺伝子のスイッチがオンになったりオフになったりするものです。

現在、HSPは環境感受性という言葉で研究が進んでいて、マイケル・プルース博士は、敏感な遺伝子をもたない人はどんな環境で育っても環境感受性が低く、敏感な遺伝子をもつ人は育った環境によって環境感受性が変化するというモデルを提唱しています。一般的な環境に育てば一般的な感受性になるし、質の悪い環境で育つとネガティブなものに対する感受性が高くなる。逆に、質の良い環境で育っても感受性が高くなるのではないか、と(論文3)
私はこれは、安心してのびのびと育てば、持ち前の感受性がさらに豊かに発達するということだと理解しています。