「担当チェンジ」だってあり。精神的タフさは人それぞれ

 

——ただいちゃもんつけてくるんじゃなくて、意味を納得しないと動けなかったり、こだわりが強かったり。自分の意思がちゃんとある人に付く方が、マネージャーとしても成長できるということですね。

N:たとえ、ただのいちゃもんやわがままだとしても、それを自分なりにポジティブに解釈できればいいんです。「○○しか食べたくないの」って言われたら、どうやってその食べ物をゲットするかを「ミッション」にしたり。私の性格的には、ミッションだと思った方がクリアしていく楽しみがありますね。でも、そう思えないタイプのマネージャーにとってはすごくつらいので、代わってもらうのも一つの選択肢だと思います。

やっぱり、精神的なタフさは人によって違うので、「私が大丈夫だから、あなたも大丈夫でしょう」ではありません。細やかなフォローを求めるアーティストには、繊細さを持ったマネージャーのほうが合うこともありますし、結局人と人なので最後は「相性」だと思います。

——マネージャーが、「どうしてもこのアーティストは合わないから替えて欲しい」ということってできるんですか?

N:意外かもしれませんが、できます。アーティストから言われることもあるし、マネージャーが「私には難しくて務まりません」みたいなことも。どっちが悪いとかではなく、相性の合う・合わないはどうしようもないですから。それは、上司との関係性もそうです。チーフマネージャーと現場マネージャーがどうにも合わない場合、組み合わせを変えることもあります。

 


100%平和な日なんてない! だからこの仕事が面白い

 

——アーティストと意見が食い違ったときは、どう対処しますか?

N:内容にもよりますが、大きなことだったら後日話し合いの場を設けます。そうでなく、例えば「今日の衣装、AとBどっちがいい?」みたいな些細なことで意見がずれるときは、その場で解決しなきゃいけない。私は、「今日はこういうコンセプトだから、Aの衣装の方がいいと思う。でも最終的に着るのはあなただから、自分が着て気持ちいいと思う方を選んでください」という伝え方をします。当然Bを選ぶときもあるけれど、すすめたAを選んだくれたときは、現場マネージャーと一緒に「よしっ!」って言い合うことも(笑)。

小さなことから、大きなことまで、本当にいっぱいあるんです。マネージャーをやっていると、100%平和な日なんてほとんどないです。でも、「同じ日々が来ない」ことが私は面白いと思っています。


インタビュー後編は11月29日公開です。
 

 

『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』
著者:株式会社TopCoat ワニブックス 1980円(税込)

芸能マネージャーという、普段表には知られていないその仕事内容。どんな生活を送っているのか、なぜマネージャーになったのか、担当アーティストとの関係はどうなのか? などを、木村佳乃・中村倫也・佐々木希・松坂桃李・菅田将暉らが所属する株式会社TopCoat(トップコート)のマネージャー陣とアーティスト達が、リアルな言葉で語ります。エンタメ業界に興味のある就職活動中の学生はもちろん、転職を考えている現役ワーカーにも参考になる一冊。若手育成に悩んでいる、マネジメントと自己実現の狭間で葛藤している……そんなミドル層へのヒントにも満ちた内容です。



写真・イラスト:Shutterstock
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵