おじさん好きのライター、木津毅です。

この記事は2023年素敵だったおじさんというお題のものですが、僕が好きなおじさんは世間で言うところの「イケオジ」とはズレるのでご注意ください。ただ、男性性や古い意味での「男らしさ」が解体されている昨今、ドラマや映画に登場する素敵なおじさん像も変わってきていると感じます。ですのでここでは、あくまで主観的に僕が今年キュンとなったおじさんたちを紹介したいと思います。

 


まずひとりめは、みんな大好きセス・ローゲン。ロマコメの良作『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』では、大統領を目指す彼女(シャーリズ・セロンがカッコよく演じています)を献身的にサポートする現代的な意味での「理想の彼氏」に扮していたセスですが、今年はApple TV+で配信中のドラマ『プラトニック』でさらに一歩踏みこみ、「理想の男友だち」を演じています。

Apple TV+「プラトニック」 Apple TV+にて好評配信中 画像提供:Apple TV+

『プラトニック』は中年男女が主役のバディ・コメディ。ローズ・バーン演じる3人の子持ちの専業主婦シルヴィアが、セス演じるかつての親友ウィルと再会するところから始まります。お互いの生活もありなんとなく疎遠になっていたふたりですが、ウィルの離婚をきっかけに昔のようにつるんで遊ぶようになります。

この遊ぶというのが、あんたら大学生か? と言いたくなるようなくだらない夜遊びばかりなので笑ってしまいます。シルヴィアには優しくて理想的な夫チャーリー(ルーク・マクファーレン)がいるのですが、だからこそ家では見せられない姿もあるというものです。そんなとき、みっともない自分もありのままで見せられる男友だちと再会し、バカ騒ぎすることで日頃のストレスを発散することになります。

「妻」や「母」や「恋人」といった立場すべてから解放されて、ふざけ合ったり悩みを打ち明けたりできる男友だち。これは多くの女性が求めながら、なかなか得がたいものではないでしょうか。そういう意味で、ウィルは男のプライドに囚われずに情けない姿もかっこ悪い姿も見せてくれる理想の男友だちと言えます。

少し情けないけれど、いつもひょうきんなウィルはセスにピッタリ……というか、ふだんの彼のイメージそのままのキャラクターです。また、どちらか片方が一方的に甘えるのではなく、それぞれ悩んだときはお互いに助け合うのもフェアな関係だと言えるでしょう。

ドラマを観ながら「これ、ちょっとでも恋愛ムードになったらイヤだな~」と思っていると、本当に友だち関係が貫かれるのもよかったです。ふたりが仲良すぎるので夫チャーリーが少し嫉妬することもあるのですが、何より当人たちが「絶対に恋愛はない」と感覚で理解し合っています。「男女の友情は成立しない」などと言われたもの昔のこと。中年になっても続く男女のかけがえのない友情を、このドラマは気持ちよく見せてくれるのです。きっとセスみたいな友だちが欲しくなりますよ。