褥瘡とスキンテアの違い


相談者の栄子さんが恐れている「褥瘡(じょくそう)」は「床ずれ」とも呼ばれ、今から20年以上前は看護の怠慢などが原因とされる、「なったら終わり」と言われる終末期の疾患でした。1998年に日本褥瘡学会が設立され、予防や治療する取り組みが全国で始まったお陰で今では大幅に改善されています。

今回施設で起こってしまった怪我は、「スキンテア」と呼ばれる高齢者特有のもの。こちらの方が一般の方は気をつけるべきことかもしれません。Skin=皮膚、Tear=裂ける、の言葉が表す通り、少しの摩擦やずれが原因で、高齢者の皮膚がずるりとめくれる皮膚トラブルです。一過性の摩擦で起こるので傷は浅く、表皮が剥がれている状態です。

高齢者の皮膚はとても弱く、ベッドの柵や手すりに肌が擦れたとき、医療テープをはがすときなど、日常の些細な摩擦で表皮が剥がれてしまいます。中には身体を拭くだけで皮がめくれてしまうことも。皮膚は75歳を過ぎるとどんどん薄く弱くなる傾向があるので、注意が必要です。

 

予防はどうする?

スキンテアは日常生活で起こるため、予防をしっかり行えばある程度は防ぐことができます。そこで、すぐに買いに行ける予防アイテムや予防法をご紹介しましょう。

スキンテアは皮膚が乾燥していると起こりやすいので、保湿は十分に。ベッド柵や手すりにタオルを巻きつけておくことも効果的です。

栄子さんの母親は、事業所で事故が起こったときは半袖のTシャツを着用していたそうですが、夏でも薄手の長袖や長ズボンを着用するのも効果的です。入浴介助や身体介助をする際も、タオルではなく泡で洗ったり、拭く時はポンポンと押さえるのも良いでしょう。

一方、褥瘡を防ぐポイントは、圧迫を起こす原因となる衣類やシーツのシワを伸ばしておくこと。効果的なのは、2時間ごとに体位を変えることです。今は自動で寝返りを支援してくれるマットレスも出ているので、ケアマネジャーなどに相談してみてください。褥瘡の予防に効果的な福祉用具はこちらに掲載されているような商品ですが、このうち一部は介護保険の対象となります。

介護保険における床ずれ防止用具・体位変換器(福祉用具)のレンタルは、一般的に要介護2以上の方が対象です。たとえば、マットレスにセンサーを内蔵したこちらの高機能エアマットレスは、購入すると20万円以上かかりますが、介護保険を使えば月に1000円程度の自己負担でレンタルできます。詳しくはこちらの記事でご確認ください。

また、褥瘡はおむつ汚れも原因の1つです。こまめに交換し、おむつの中で蒸れないようにしましょう。


おすすめのスキンケアアイテム


私、渋澤も両親の肌の乾燥やスキンテア、褥瘡には悩まされました。ですが特別高価なスキンケア用品を使っていたわけではありません。日々の保湿目的であれば、若い人が使うような安価なものでも十分です。私はスーパーなどでも売っているアロエタイプメンソールタイプのものを惜しみなく、朝晩2回たっぷりと使用していました。

おむつかぶれには、皮膚保護のクリームとして「3M キャビロン ポリマーコーティング クリーム」を。褥瘡になりそうなときは、栄養補給も兼ねて早めに「アバンド」という清涼飲料水を飲ませていました。

今回は、自宅でもできる褥瘡とスキンテアの予防法をご紹介しました。これらを実践することも大切ですが、あくまでも参考としていただき、症状によっては早めに医療機関を受診してください。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

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