K-POPは3秒で目線を引かなければならない、そうしないとチャンスをつかめない。韓国では、刺激があるものしか生き残れない


――K-POPについて伺います。K-POPに初期から関わってきたひとりとして、どのように定義しますか。

チョン:K-POPとは一瞬で人々の関心を引くような音楽。その理由は、K-POPには悲しい歴史があるからです。日本は音楽市場がアメリカに次いで世界2位です。人口も多く、国内市場だけで勝算があります。著作権制度もしっかりしているし、日本の国民は誠実でCDを買って収益がきちんと上がる構造になっています。一方、韓国は人口が少なく、システム自体があまり整備されていなかったため、海賊版や違法ダウンロードも多かった。韓国の人自体がすぐに別のものに目移りしがちで、韓国国内だけでは収益を得るのが難しかった。

そのため、国外に市場を広げないと生き残る術がないと判断したのです。歌詞は、外国の人が翻訳して聴くというのは不可能だと考えて、あきらめました。音楽を見て聴いた人から注目を集めなければならない。そのためには、3秒で目線を引かなければならない。そうしないとチャンスをつかめません。

パフォーマンスをするなら、ダンス。J-POPはカラオケでゆっくり真似をして踊るスタイルですが、韓国は海外がターゲットなので、国内のカラオケ市場は重要ではなく、ダンスもかなり強力なパフォーマンスが必要だと考えました。「この人誰?」と一瞬で興味を引くように、音楽もシャウトを入れたり、ダンスもラップの要素を盛り込んだり。

こうしたすべてをトータルしてみると、刺激が重要なのだと思います。メイクやヘアスタイルも強烈に。日本はナチュラルですよね。韓国では、刺激があるものしか生き残れないと考えて、そのように寄せていったのです。

それがYouTubeを通じて世界に広がりました。いろいろ見ているうちに「あ、これは何だろう」と手を止めて、K-POPのミュージックビデオを見る。それが広まったきっかけだと思います。

チョン・チャンファンさんがプロデューサーを務めるオーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』決勝戦進出者

――「K-POPは見る音楽だ」という人もいます。

チョン:そうですね。瞬間的に刺激を与える。YouTubeをはじめとするネットの動画もどんどん短くなっている。それがタイパ時代の若者たちにぴったり合っていたのかもしれません。

――YouTube時代を予感していて仕掛けていたのでしょうか。または仕掛けているうちにYouTubeの時代が到来したのでしょうか。

チョン:後者ですね。90年からこうした考えで進めていたので。短い時間に衝撃を与え、注目を浴びる。当時は海外に波及する力はそこまで強くなかったのですが、YouTubeをはじめとするメディアが発達したことで、影響力がどんどん大きくなりました。