なぜここにきて「ネイビーを辞めましょう」の流れが?


そんなネイビー服ですが、最近お子さんを私立幼稚園に通わせているという知人たちから興味深い話を聞きました。

なんと一部の学校で「親御さんはネイビーの服ばかりでなく、好きな服を着てください」という通達があったそうです。理由は、「無理にネイビー服に縛られなくても大丈夫ですよ」というシンプルなものから、「お母さんが暗い色の服ばかり着ていると、子どもの気持ちも暗くなる可能性がある。お母さんが好きな色の好きな服を自由に選ぶ姿を子どもにも見せてあげてください」というものもあったそう。

この話を聞いて、完全な外野ではありますが、私は咄嗟に「時代の変化はこんなところにも現れるんだ。自由が増えるのはきっと良いことだなあ」なんて能天気に思いました。

ところが当事者の多くの母親たちは、正直なところこの流れに戸惑っているようです。というのも、これまで「母親らしさ」「子どもを差し置いて主張しない」「華美ではなく」「目立たない」を突き詰め、ネイビー服を何着も揃え、髪も黒く染め、ロゴのない同じくネイビーや黒のバッグを持っていた母親たち(噂によると、近年流行の美容医療もあまりやりすぎると「自己主張の強い母親」と見なされ、お受験などに不利に働くよう……)。

写真:Shutterstock

そして「好きな服を」と言ってくれつつも、とはいえ「母親らしい」「華美ではない」というルールは残っているようなのです。要は、かなり難易度の高いオファーなんですね。

 

もちろん、突然ミニスカートなどの露出度の高い服(なんて着る人はいないでしょうが)で送迎をされても困るのでそうした規定があるのだと思いますが、母親たちは周囲を観察しつつ、ネイビー以外の服を着る失敗を恐れ、結局依然として皆ネイビーを着続けることが多いのだそう。

言われてみれば、たしかにこれは難易度の高いファッションです。

結婚式などの冠婚葬祭にも実に様々なルールがありますが、少々面倒だとは思いつつ、やはり間違えると恥ずかしいですし、周囲に世間知らずな印象を与えたり、ましてや失礼に当たるのは避けたいところ。だからネイビーで無難にやり過ごしていたのに、中途半端な選択肢を与えられても逆に困ってしまうのです。

この話をファッション関係の知人にしたところ、「華美ではないって、何なんだろう。そうやって女性を制限するなら、結局『好きな服』だとは思えない」と言っていました。たしかに。ママたちも「もうスタイリストさんをつけたい」「時間を見つけてデパートに相談に行く」なんて話していたので、やはり本質的には学校側の言う「好きな服」ではなさそうという印象です。