日本で離婚が増えた三つの要因

 

かつて日本社会で「離婚」はタブー視されていましたが、今は3組に1組は離婚する時代。もはやタブーでも後ろめたいことでもなくなった印象はありますが、この離婚件数の増加とイメージの変化にはどんな背景があるのか…不思議に思ったことはありませんか?

ちなみに、社会学者・山田昌弘さんは自著『パラサイト難婚社会』において、日本で離婚が増えた要因として以下の三つを挙げています。

① 皆が結婚する「皆婚」社会が常態化しなくなったこと。
② 「結婚すれば幸せ」「未婚や離婚は不幸せ」というセオリーが崩れ、「多様な幸せの形」を人々が意識するようになったこと。
③ 生き方の多様化で、従来の「男女分業型結婚(生活)」が崩れたこと。

おそらく、①と②に関しては詳しい説明がなくても理解できるのではないでしょうか。ただ、③に関しては補足が必要かもしれません。ここでいう「男女分業型結婚」とは夫が外で働き、妻が家事全般を担うというかつて主流だった結婚スタイルのことですが、これの崩壊がどうして「離婚」につながるのか?

 

たとえば、夫が定年退職したパターンであれば離婚への流れが容易に想像できるでしょう。山田さんは本書においてこのように書き記しています。

「『外で家族のために働きお金を稼ぐこと』が夫からの愛情の証だったのに、『外で稼がなくなった夫』は、何によって妻の私に『愛情』をくれるのか。定年退職という区切りで、『家庭内における男女分業』システムが解消したのなら、私も家事から解放されるべきではないか。それにもかかわらず、妻としての愛情の証である家事は死ぬまでしなくてはならないこの理不尽さをどうしてくれようか……。代弁すれば、このようなところでしょうか」

ところが、「男女分業型結婚」に囚われていないはずの若年夫婦の離婚にもこの古い価値観の影響が見られるようです。どうやら、この流れを読み解くには、日本特有の夫婦観である「愛情の分散投資」から理解する必要がある模様。

そこで今回は、本書から抜粋するかたちで、日本の夫婦観の特殊性とそれが離婚へとつながる理由について説明したいと思います!