「活躍できなかった選手」への思いを口にした栗山監督

撮影:杉山和行(講談社写真映像部)

「選手たちが頑張ってくれたおかげ」「ファンのみなさんの応援のおかげ」。監督を務めた2023WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)はもとより、北海道日本ハムファイターズ監督時代にも、ことあるごとに周囲への感謝の気持ちを述べていた栗山英樹さん。筆者がことさら印象に残ったのは、インスタで流れてきた、WBC終了後の選手への挨拶での言葉です。
 


「これだけ素晴らしい選手が集まったにもかかわらず、大会にちゃんと出ることができなかった選手もいると思います。本当に嫌な思いをさせたと思いますけど、本当に勘弁してください。チームが勝つために一生懸命考えてやったことなので、それは勘弁してください」
——侍ジャパン 公式インスタグラムより


「優勝してよかったよかった」ではなく、悔しさを抱えたまま大会を終えることになった選手にも心を寄せた栗山監督。結果を残せた選手、そうでない選手。一人ひとりに敬意を払った「最後の挨拶」に、「なんてかっこいいリーダーなのだろう」と痺れたのです。
 

 


「結果が出ない」と嘆くことがもったいない


栗山さんが今年3月に刊行した著書、『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』には、「結果」について綴ったパートがあります。

驕らず謙虚に、当たり前のことを丁寧に積み重ねる。本書を読みながら、そのお人柄に改めて感動しきり。(筆者撮影)


努力はしていても、結果が出ないことはあります。でも、そこで一番もったいないのは、結果が出ないことを嘆くことです。結果が出ていないこと以上に、嘆いていることがもったいないと思うのです。

今は結果につながっていないかもしれない。しかし、それは10年後、20年後、30年後に意味をもってくるかもしれないのです。相手が野球選手なら、僕はこう言うかもしれません。

「野球の世界だけで結果を出そうと思うな。求められるのは、生き様なんだよ。姿勢なんだ。なのに、こんなことをやっていたら、神様は応援してくれないぞ。お前のためにもならない」

僕自身、若い頃は結果が出せませんでした。ところが、驚くべき未来が待っていました。誰にでも、そのチャンスはある。ただし、そのためにはやるべきことをしっかりやっておくことが大事になるのです。今、結果が出せなかったとしても、その努力が思わぬ形で未来に生きてくる可能性は間違いなくあるのです。


栗山さんは自身の現役時代を振り返るとき、「僕には華やかな実績があるわけではない」と語ります。入団2年目には原因不明のメニエール病を発症し、「結果を出したくても出せない」悔しさも経験。最終的には引退を決意するわけですが、引退後はスポーツキャスター・野球解説者として活躍し、そのわかりやすく丁寧な解説で人気を呼びました。栗山さんが登場するスポーツコーナーを密かに楽しみにしていたのは、筆者だけではないはずです。

写真:Shutterstock

そうして、20年以上プロ野球の“現場”から離れていた栗山さんでしたが、コーチ経験がなかったにもかかわらず、北海道日本ハムファイターズの監督に大抜擢。さらにはWBCの監督を務め、チームを世界一へと導きました。

まさに、栗山さん自身が「驚くべき未来」を体現した。だからこそ、「努力が思わぬ形で未来に生きてくる可能性は間違いなくある」と断言できるのでしょう。

 
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