本作りは「編集者との巡り合わせ」がめちゃくちゃ重要

2冊目のエッセイ『死ねない理由』(中央公論社)。いろんな方に表紙をベタ褒めされる我が子。カバーをつけた時と外した時で印象が変わります。

前編では、本を出版するまでの過程について書いていきました。後編では、本を出版する上で感じたあれこれについて書いていきたいと思います。

前編では、本を出版するには「巡り合わせ」が大事、と書きました。企画がよくても、それがいいと言ってくれる編集者と出会えなければ出版には至りません。そして、いい本、その定義は難しいですが、少なくとも自分が納得するものを作るためには、編集者との相性がめちゃくちゃ重要だと感じます。

 

文章の修正の仕方も、編集者によって全然違います。メンタルが潰れるくらい大幅に修正(「赤入れ」と言ったりします)してくる人もいれば、逆に超放任というタイプも。赤入れの量というより、修正の指針が明確か、納得できるものかどうかで、執筆のモチベーションが大きく変わります。

ざっくり言えば、バイブスが合うか、というのがめちゃくちゃ大事なんですよね。単発の記事であれば、そりが合わなくても少し我慢すれば嵐は過ぎ去ります。でも、書籍は長い期間一緒に作業する必要があります。そして、一度紙にしたものは残り続けるので、妥協もできません。

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でも、そんなめちゃくちゃ重要な「編集者との相性」をはかる時間はごくわずかしかありません。そもそも、新人が編集者を選ぶということはなかなか難しいです。人気作家なら、数あるオファーの中から自分で選ぶ、ということができますが、普通なら「本を出そう」と言ってくれる編集者と出会うこと自体が奇跡。どんな人かを吟味する余地はありません。

ただ、やはり直観、第六感と言うものは当たる部分があります。話してみて、この人とはなんか合いそう、みたいな勘は働くものです。1冊目はコロナ禍だったので、オンラインで少し話しただけで出版を決めました。

あとは、その編集者が過去担当した本のラインナップをみれば、大体の傾向はわかります。読者から見れば、著者が全て内容を決め、構成して書いているように映るかもしれませんが、実際は見出しから章立て、細かい部分まで、結構編集者の手が入っているものなんです。本の内容や方向性はもちろん、本が出たあとのプロモーションのやり方まで、編集者とのコミュニケーションによって決めていきます。いい編集者と巡り会えるかどうかが、いい本づくりができるかどうかを大きく左右します。