シングルマザーとしての日々

神田 六夏さんの生き方や子育ては潔く、芯が通っている。若い頃にシングルで子育てをする決意をしたことも本当に強いな、と。

六夏 人生いろいろですよね。私は若い頃に結婚をして、息子を授かりました。今思うとすべて、若いからこそできたことだと思います。私の場合、その時は仕事はしておらず専業主婦で。結果的に25歳で離婚をしました。もう、本当に今思えば怖いもの知らず、という感じ。自分が決めて結婚をして、離婚も自分で選んだ道だったのですが、そこに子供を巻き込んでしまったということをきちんと受け止めねば、と。息子と向き合ってちゃんとした生活をしようと決めて、それに納得できるまでは再婚はまったく考えていませんでした。結婚を決めたのも自分。子供を産んだのも、離婚を決めたのも自分。それにきちんと責任を持ちたかったんです。だから実家には少し帰ったけれど、すぐに家を借りて、自分で生活を始めました。

神田 親にも頼らず、本当にすごい。私たちはなんでも、環境や相手のせいにするのは簡単だけれどそこに依存せずに若い頃から自立している。

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六夏  その頃、仕事は何をしていたのか忘れてしまっているほどめまぐるしい日々でした。でも、シングルで息子を育てる決意をして、本当に大変だった時に、モデルの仕事のご縁をもらったんです。人生は本当にいろいろだな、と。10代の頃にモデルになりたくて、すごくダイエットしたりして頑張ったけれど全然縁がなかったのに。その頃は「21,2歳までに売れていなかったら、モデルや芸能の仕事なんて無理だよ」という時代だったので「もうダメなんだ」とモデルの仕事は完全に諦めていました。ですが、気づけば、世の中はいつの間にか「アラサー」や「ママモデル」がもてはやされる時代に。私はちょうど子供を産んでいたので、VERYに呼んでいただくことができて。ちょっとだけモデルとして誌面に出していただいていましたが、もちろん親子2人が食べられるほどの収入にはならない。その時に、ライターさんにこっち側の仕事もやってみればと声をかけていただき、撮影現場が好きだったので、ライターとして働きはじめました。

ライターから、一度は諦めたモデル業へ

神田 その時はモデルではなく、記者として誌面を作るほうを? そこからどうやって人気モデルに?

六夏 ライターとして臨んだ撮影現場で、モデルの友達役という設定で、少しずつですが画面に写ることが増え、そのうちに私をモデルとして撮影したいとお話をいただき、少しずつ誌面に出るようになっていったんです(笑)。今思うと、変に10代でモデルとして売れているより、いろんな経験ができてよかったな、と。

神田 ご自身のチカラでちょっとずつ引き寄せたLUCKですね。何事も積み重ねていくと、どこにチャンスがあるかわからない。自分の環境や、目の前のことをきちんとこなしていくと、必ず見ていてくれる人がいる、といういい例! 六夏さんには女性としての真の強さを感じます。コツコツと努力をし、花を開いて、実を結んでいくのがよくわかります。

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夏でも冬でもカゴバッグが大活躍です。エバゴスのベーシックな形を愛用しています。

六夏 ブランドも何もわからなかったからこそ、始められた。本当に細かな作業は大変だし、お金の計算も全く自分には向いてないけれど(笑)。最初からどこか大手のメーカーと組んだり、誰かと一緒にやっていたら、こんなに続けていられなかったんじゃないかな。自分でやっているからこそ、子供のことやモデルの仕事で忙しくても自分のペースで続けられてきたし、学ぶことが大きかったような気がします。ブランドを始めたことで、日本国内で行われている手仕事の大切さやそこでの人手不足、その他の苦労など、いろんな背景があることも知ることができた。モデルとして服を着る仕事でも、ブランドとコラボで服を作る仕事にしても、それを知っているのと知らないのとでは、全く違っただろうなと思っているんです。

悩むよりアクション。そうすれば必ず次がある

神田 私も編集者からブランドを作り始めて、見えない部分でどれだけの人が服作りに関わっているかを知りました。立場が変わると見える視界が変わって、より自分の人生も深まる気がする。大変なことはきっとどんな仕事にも山ほどあるけれど、それをやり甲斐と思えるかどうかは、自分がどれだけ一生懸命なのか、にかかっている。継続は力なりで、3年、5年と続けているとまた自分のステージが変わってくるのも実感しています。

六夏 ブランドをもし立ち上げていなければ、うずうずと、ずっと「どうしよう、どうしよう」と悩み続けていたと思います。やっぱり、一歩、踏み出す勇気が人生にとって大切なチャンスをつかめるかどうかにつながっているなと思います。離婚も、子育ても、モデル業も、そしていま再婚をして、出産をしました。どれもこれも、「これだ!」と思ったことに自分なりに一生懸命に向き合ったからこその結果です。悩んでいるよりも、アクションしたからこそ、次がある。今、息子は12歳。手がかからなくなったころに、一廻り年の違う赤ちゃんを授かりました。主人や息子の手を借りながら、仕事はマイペースに復帰していこうと思っています。

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ワンピースは今回nanadecorで作らせてもらったオーガニックコットンのもの。着心地も良くて、外着としてもリラックスウエアとしても活躍しそう。カーディガン代わりにもなる、アラン編みのストールは「THE NEW HOUSE」のもの。

神田 いつも前向きで、いろんなことにトライしていながら、六夏さんは自然体。だからこそ、自分らしく、気負わず、進んでいけるのかな、と思います。tow elevenのワンピースもそんなシンプルな生き方が現れていますよね。ベーシックで着やすいデザインだけれど、ちょっとぴりっとしていて、キチンと感がある。アクセサリー次第でいろんな顔になれるデザインです。今回、nanadecorでも六夏さんが考えたワンピースを発表するのですが、それも素材の使い方などメリハリがあって、リラックス一辺倒じゃない。きちんとした、でも着心地のいいデザインが完成しました。

六夏 ファッションを楽しみながら、自分らしく生きられたら素敵ですよね。妊娠、出産、そしていま。このいまの自分だからオファーをしてくれる仕事がある。だからひとつひとつ大切に、これからも育んでいきたいです。


対談を終えて……

六夏さんの生き方は本当に潔い。「自分に責任を持つこと」言葉では簡単ですが、普通はその裏に寂しさや、弱さや、自信のなさや、心細さが必ずあるはず。でもそんな気持ちにフォーカスせずに、逆に前に進む力に変えていく、才能があります。何事もやってみないとわからない、と思うところも、それが新しい出会いや、仕事の開拓へとつながっているんですね。ファッションについても、毎シーズン、トレンドの服も適度に取り入れてきたという六夏さん。産後リラックスムードの今シーズンは、新しくトレンドのアイテムを買うのではなく、手持ちのお気に入り定番服を着まわして、自分らしいワードローブ作りを楽しんでみようと決めたそう。こうしてファッションでも、自分らしさを常に追求しているところも前向き。今後、そんな「六夏的な私の使える定番アイテム」を織り交ぜた、私服スタイリングをミモレでもご紹介できたらとも思っております!

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聞き手:神田恵実nanadecor ディレクター/Juliette主宰 ファッションショーの制作、編集プロダクションを経て大手出版社に勤務。後にJuliette.incを設立しファッションエディターとして、女性誌や書籍の編集、国内外のファッションブランドの広告、カタログやウェブ制作などを手がける。2005年にはオーガニックライフの素晴らしさと必要性を伝えたいと、「nanadecor」をスタート。プロダクト開発のみならず、ワークショップの企画、女性の雇用支援など、衣食住、様々な視点から、オーガニックライフをトータルで啓蒙。現在はオーガニックに関するコンサルティングやディレクション業務、睡眠の重要性を伝える活動、幼児教育に関するアプローチを始める。リマクッキングスクール師範科卒業、睡眠改善インストラクター。AMPPルボアフィトテラピーアドバイザー。
撮影/林洋介 取材・文/神田恵実
 
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