昨年末、第2子を出産したばかりの今宿麻美さん。今もなおモデルとして活躍し続け、ストリートファッション世代から絶大な支持を集める彼女とその夫でありスタイリストのMASAHさんが今回のゲスト。家族を持った今だからこそのファッションに対するスタンスと想いを語っていただきました。
「ピンク」と「黒」のベビーカーなら
私たちは迷わず「黒」を選ぶ
MASAH(以下、M):僕たち夫婦は、ストリートファッション世代ど真ん中なんですね。今も毎日パーカにスウェットパンツを合わせて履いていて、変化があるといえば、時々スウェットがジーンズに変わるくらいのもの。
今宿(以下、今):私がストリート誌でモデルをしていていた頃から今も変わらず、そのスタイルはすでに私たちにとって日常の一部になっているんですよね。
M:呼吸をするようにストリートファッションを身にまとっている(笑)。そんな僕らが、30代後半で長男の青馬を授かり、人の親になったわけで。僕は、あーちゃん(今宿さん)の妊娠中の定期検診にも結構ついて行ったりしてたんですが、待合室には想像以上に同世代の方が多くいらしたんです。それで、いざ子どもが生まれるってなって、「ベビーカーどれにする?」って話にあーちゃんとなったとき、子どもが乗るからといって女のコならピンク、男のコならブルーみたいな選択肢になることに違和感があったんですよ。
今:実際、メーカーの方から黒いベビーカーの需要が年々上がってきているというお話も耳にしたよね。
M:ファッションと同じで、子どもの身の回りのものにしても、自分たちの感覚に無理をしないプロダクトがあればいいという想いがどんどん膨らんでいきました。そんな中、数年前に“the POOL aoyama”と期間限定のポップアップイベントの企画が持ち上がって、その想いがどんどん形になっていったんです。
今:特に男のコ向けのものはバリエーションがものすごく少ないんですよ。そんな市場を目の当たりにして、頑張りすぎてない雰囲気のモノトーンのアイテムがあったらすごくいいなって思ったりして。
M:まず汚れにくいし、合わせやすいし。
今:MASAHは、主張のあるスニーカーとか、好きだもんね。
M:そうそう。でも、着ているものがモノトーンなら大抵の靴はハマるから、そういう意味でもいいんだよね、モノトーンって。
今:それから、家族は増えてその分ワードローブも増えていくのに、家の中のクローゼットは大きくならないという現実もあったりして。そうすると、どうしてもクローゼットの中に置いておくものが厳選されていくから、そういう意味でもモノトーンは重宝するなって思います。
M:でもさ、青馬も3歳になったら、ファッションに対してきちんと自我が芽生えてきたよね?
今:それはもう。前よりもこういう色が着たいとか主張することが増えました。
M:だから、息子と話していて体感的に、こういう色の洋服もあった方がいいなと思ったら、それを商品にすることを考えてみたりとか。
今:息子が年齢を重ねる分だけ、その年齢相応の新しい価値観に触れる気がしています。この春、伊勢丹さんで復活することが決まった商品ラインナップはそういう意味でかなり、前回よりもカラーバリエーションが増えたよね。
M:再発足が決まった時には、まだ年末に生まれた2人目の子供の性別が決まっていなかっということもあって、女のコが着ても可愛いアイテムもちょっとだけ意識しています(笑)。僕ら家族と一緒に、お店もブランドも成長していく形でやっていけたらそれがベスト。そこはやっぱり、いい意味で肩の力を抜きながら過ごすのがモットーのストリートファッション世代なので。家族でお揃いコーデとか今まで全く興味がなかったけど、テイストを揃えるとかブランドをリンクさせたりすると子どもが「一緒」って喜んでくれたりするのは可愛いなって思ったりして。父親になって、僕の価値観も日進月歩で変わっていったりしています。
”おしゃれ番長”だった今宿が
ファストファッションを買うようになって
僕は正直、切なくなった
M:結婚しても、子どもが生まれても、僕らのベースにはストリートファッションがあったんですけど、あーちゃんがある時期を境に、ファストファッションを取り入れるようになったんですよ。
今:昔も今も変わらずファッションが好きなことに変わりはないんですけど、出産してからは自分が着たい気持ちだけで好きな服を着るのはなかなか難しかったりするじゃないですか。ヒールもまた履けるかなって思ってたけど、抱っこ紐しながら履くのは大変だから、どうしてもスニーカーを選びがちになりますよね。抱っこ紐の話でいうと、装着しやすいようにワンピースやシンプルなパンツスタイルが増えていくわけで。あと、やっぱり育児をしていると汚れるリスクが高くなるんですよ。でも、トレンド感のあるアイテムはやっぱり取り入れたくて。だからと言ってそこにあまりお金をかけすぎるのはもったいない気がするし……。
M:実際、真面目に「僕にとっての今宿麻美はそういうんじゃないんだけど」みたいな話をしたこともあったよね。
今:ありました(笑)。
M:でも僕が熱弁したら、今はそれどころはないし、抱っこしたらシワにもなるし、でもおしゃれも楽しみたいから、10万円の服を1着買うよりも2万円のものを5着買って、それを着替えて楽しみたいって話してくれて。そういうスタンスも一理あるということを理解できて、胸のつっかえが取れた。
今:ファストファッションをうまく活用しつつも、靴やバッグにはきちんとこだわっていたいし、例えばパンツを履くなら細身にしてトップスをビッグシルエットにするとか、子育てというある意味制限のある中でおしゃれを工夫するのって、結構楽しくもあるんですよ。
M:でも、あのフリルのついたワンピースだけはちょっといただけなかったな……。
今:ずっと言ってるよね(笑)。もちろん、ストリートカジュアルが一番好きではあるけれど、女性っていろんなテイストのコーディネートを楽しみたい生き物なんだと思う。いつも同じテイストだと、飽きちゃう瞬間があるんだよね。
M:そうみたいだね(笑)。ファッションは結局、それを着ている本人が楽しむのが一番だと思うから、そう言われたら僕に異論はありません。
今:年齢を重ねるにつれ、時々、おしゃれに迷うという声も周囲からはよく耳にするけれど、やっぱり私はいくつになっても自分が好きなものを着ることが一番大切だと思う。「カジュアルなコーディネートって何歳までしていいですか?」みたいな質問もInstagramによくいただいたりしますが、おしゃれに年齢制限なんてないと、私は思うな。
M:おしゃれって、そんなに頭で考えることでもないしね。考えると面白みに欠けてしまう。極論、服装や持ち物なんて関係なくて、どんな服を着ていても、その人自身が楽しそうに笑っていることがファッションにおいて一番大事なことだと思うんですよ。ストリートファッションって、もともとはスケボーやダンスをやるための服でカルチャーに付随したものだから、その向こう側にそれを着ている人の笑顔がある。それに、ストリートファッションはもともと大人が子どもになろうとしたファッションでもあると思うので、大人になった今こそむしろ昔に戻ったような感覚で楽しめるといいのかなって。
今:あとは、細かいことを気にしないっていうのもストリートファッションの醍醐味だと思いますね。
M:Tシャツがぶかぶかだったり、デニムにダメージがあってもそれが味になったりするわけで。若い頃は、このスニーカーにはあのTシャツを合わせたいとか、細かいこだわりもいっぱいあったけど、この年齢になっておしゃれに対する感覚が一周も二周も回ると、「これがいいじゃん」が「これでいいじゃん」に変わってくると思うんです。きっとファッションなんて、そんな風に気楽に楽しめばいいんですよ。
<information>
2人のセレクトショップ<IN THE HOUSE>
イチ押しアイテム&POP UP開催のお知らせ
2016年、藤原ヒロシ氏が手がける青山のコンセプトショップ“the POOL aoyama”にて期間限定で展開した、スタイリストMASAHさんとモデル今宿麻美さん夫妻が手がける、ファミリーでファッションを楽しめるセレクトショップがこの春、伊勢丹新宿店で復活。それに先立ち、2/28〜3/6に伊勢丹新宿店本館1階ザ・ステージ、3/14〜20に大阪ルクアイーレ 4階 イセタンクローゼットにてポップアップイベントを開催予定。3/28には伊勢丹新宿店本館6階 PARK内にて常設に。オリジナルアイテムをはじめ、『NEIGHBORHOOD』、『A BATHING APE®︎』、『PORTER』などの限定アイテムや『N.HOOLYWOOD』、『FACETASM』初となるキッズコレクション、『MARNI』初となるボーイズコレクションなど、気になるアイテムがいっぱい! 中でも注目のアイテムを一足先にご紹介します。
IN THE HOUSE
< POP UP>
2月28日(水)〜3月6日(火) 伊勢丹新宿店本館1階=ザ・ステージ
3月14日(水)〜3月20日(火) 大阪ルクアイーレ 4階=イセタンクローゼット/ザ・ステージ
3月28日(水)〜 伊勢丹新宿店本館6階=ウエストパーク/ザ・ステージ#6
オフィシャルInstagram
ID @inthehouse_isetan
ハッシュタグ #inthehouseisetan
結婚して子供を持つストリートファッション世代の夫婦がファミリーで楽しめるのはもちろん、シングルでも日々のワードローブに取り入れたいこなれ感漂うアイテムがズラリ。キッズファッションや雑貨は、ギフトにも最適です。裏テーマとして、伊勢丹のテーマカラーの青と黄色が設定されているので、随所でコラボ感を楽しんでもらえるはず。MASAHさんと今宿さんのセンスが遺憾なく発揮されたショップに、是非、足を運んでみてください。
構成/川端里恵(編集部)
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