大好きだった祖母が選んだという点も嬉しい「タンク ルイ カルティエ」。シャツ×デニムのカジュアルスタイルを、品格漂うシックさで引き締めてくれます。

母から受け継いだ「タンク ルイ カルティエ」、父から譲り受けた「グランドセイコー」、二十歳の記念に祖父に買ってもらったロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」。私が愛用している3本の時計は、すべて家族や身内から贈られたものです。

「タンク ルイ カルティエ」は、社会人になるタイミングで母から譲られたもの。母にとっては、二十歳のお祝いに祖母から贈られた思い出深い時計だったそうです。祖母は、一般的な母親像が“スカートをはいたフェミニンな女性”だった昭和40〜50年代に、パンツにスリッポンを履き、煙草をふかしながら家業の帳面をつけているような粋な人でした。母も、やはりパンツスタイルを好む、どちらかというと凛々しい雰囲気の女性。昔から変わらぬファッション好きで、時計以外にも、バッグやジュエリーなどさまざまなアイテムを通して、上質なものを教えてくれました。

その後、結婚して家を出る時に父がくれたのが「グランドセイコー」。銀行員だった父のファッションは、王道的トラッドスタイルで、ネイビーのスーツにレジメンタルタイ、休日も衿付きのシャツが欠かせませんでした。なかでも靴には、気に入ったひとつの型を何足も買い揃えるようなこだわりが。子どもの頃は、そんな父の姿が“おしゃれ”に結びつくことはありませんでしたが、いま振り返れば、確固たるスタイルのある人だったのだと思います。

そして、唯一自分で選んだのが、ロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」。決め手はタフさとエレガンスが共存するデザインでしたが、3本すべてに共通するのは、オーセンティックでエッセンシャルな存在感。仕事では、めまぐるしく変わるファッショントレンドをお客さまにお伝えするため、服はもちろん髪型までシーズンごとにスイッチすることも。時計は、そんな私のスタイルの軸となってくれるものなのかもしれません。若い頃は、その時計が似合う女性になるために頑張っていたところもありましたが、歳を重ねるほど自分に馴染んでくるのも心地よい変化。

コンビカラーのため、シルバー金具の小物との橋渡し役にもなってくれるロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」。手元はいつもゴールドジュエリーでまとめます。

さらに、時計は毎日欠かすことのできないアイテム。両親や祖父母との繋がりが感じられ、身に着けるたびに背筋をしゃんと伸ばしてくれる、お守りのような存在でもあるのです。

昔の両親の写真は、いま眺めてもおしゃれなムード。2本の時計は、当時のふたりにも、いまの私にも寄り添ってくれるエターナルなデザイン。


CREDIT:
(タンク ルイ カルティエのカット)
シャツ/ジョゼフ
デニムパンツ/ドリス ヴァン ノッテン
左手のエンゲージリング/ブシュロン
左手のマリッジリング/フレッド
右手のリング(2本とも)/カルティエ
バッグ/バレンシアガ
靴/セリーヌ

(ロレックスのカット)
ニット&パンツ/ジョゼフ
デニムジャケット/ヴィンテージ
左手のエンゲージリング/ブシュロン
左手のマリッジリング/フレッド
右手のリング(2本とも)/カルティエ
バッグ/エルメス(母から譲り受けたもの)
靴/メゾン マルジェラ

PROFILE 山川由香里さん

「ジョゼフ」の販売員を経て、現職は同ブランドVMD(ヴィジュアルマーチャンダイザー)。ディスプレイやウィンドウデザインの他、バイイングやプロモーションの企画等にも携わる。プライベートでは、おいしいものとお花をこよなく愛する一面も。

構成・文/村上治子