映画『君の名前で僕を呼んで』~『モーリス』好きは必見! 17歳と24歳の青年のひと夏を美しく描写したラブストーリー_img0
 

『君の名前で僕を呼んで』
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ、マイケル・スタールバーグ
配給:ファントム・フィルム 4月27日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて公開
©Frenesy, La Cinefacture


『モーリス』にハマってお耽美映画に開眼した過去を持つミモレ世代は、とっても多いのではないかと思います。そんな方に全力でおすすめしたいのが、『モーリス』の名匠、ジェームズ・アイヴォリー監督が脚本を手がけ、アカデミー賞脚色賞を受賞した『君の名前で僕を呼んで』。恋の喜びと痛みに身を浸してうっとりしているうちに132分が過ぎていき、もはや永遠に観ていたいんですけど!? 状態になってしまうラブストーリーです。

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舞台となっているのは、83年、北イタリアの避暑地。毎年、両親とともにこの地で夏を過ごす17歳のエリオが出会ったのは、大学教授の父の助手としてアメリカからやってきた大学院生のオリヴァーでした。ともに時間を過ごすうちにふたりは惹かれ合いますが、ひと夏の終わりが近づいてきます。草いきれのなかで言葉を交わし、陽光降り注ぐプールで水浴びをして、月夜の晩にほろ酔いでダンス。エリオは女の子と体を重ねたりもしますが、オリヴァーに対して芽生えた思いをぶつけ、大人の余裕と分別もあるオリヴァーもまた、ときには戸惑いながらも彼の思いを受け止めていくのです。

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英語、イタリア語、フランス語が飛び交い、文学の香りとピアノの音色のなかでゆっくりと時間が過ぎていく夏の家。男性ふたりの関係を官能的な映像で切り取った作品ではあるけれど、禁断の恋や悲劇的な面に目を向けるのではなく、誰もが通過する初恋の痛みとときめきにフォーカスして普遍的なラブストーリーに昇華させたところに、新鮮さを感じました。80年代が舞台であることを考えると、最後にエリオの父親が語る言葉は進歩的にも思えます。そうした願いやメッセージに説得力があるのは、役者陣の素晴らしい名演あればこそ! 

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エリオを演じたのはハリウッドの新星、ティモシー・シャラメ。萩尾望都の漫画からそのまま飛び出してきたとしか思えない二次元的なルックスと、ラストシーンの長回しの移ろう表情の豊かさにひれ伏し、教養のある年上の男を演じたアーミー・ハマーの上品さと野性味にひれ伏し……、美しい演技派のふたりの共演にKOされる普遍的で新しいラブストーリー。4月28日からは『モーリス』の4Kデジタル修復版も公開されるので、あわせてスクリーンで堪能してください!

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PROFILE

細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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