両親の離婚、厳しい母……
もっと優しくしてほしかった

少女の心に密かに暗い影を落としていたのは、体調面だけではない。当時の家庭環境も、その一つだった。
「私が幼稚園児だったとき、両親が離婚。その後、父はたまに家に来ていたけれど、当時は父のことがとても苦手でした。一方、女手一つで私たち三姉妹を育てなければならなくなった母は、朝から晩まで懸命に働き、家にほとんどいない状態。子どもだけで暮らしていたようなものでした。しかも母はすごく厳しくて、何にでも『イエス』と言って従わないとしないと手を上げられる、という感じだった。自分の意見を口にするなんて、言語道断。あまりにも怖くて、イメージの世界で、『私のお母さんはほかにいるんじゃないか』とか想像していたくらいです。それなのに、やっぱり母のことは大好きで。私には、親と言えば母しかいなかったからだと思います。今思い出すと、母にもっと優しくしてほしかった、という気持ちがすごくありましたね」

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高校生の頃、愛犬と。今とはイメージが全然違って、よく「寂しそう」と言われていました。

やっと見つけた夢、優しい夫
それでも心の穴は埋まらない

運命の神様に導かれ、人生が転がり出したのは、高校生のときだった。

「地元福岡で行われたミス・ユニバース日本大会の九州予選に出場し、最終選考の10人に残ったものの、結局落選。そのとき人生で初めて『悔しい』と思い、この道で頑張ってみたいという目標が生まれたんです」高校卒業と同時に上京し、モデルとしてスタートを切る。

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そして、数年後には女優業にも進出。

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「でも体調があまりにも悪いせいで、憧れていたはずの仕事を心から楽しめませんでした。毎日のように反省を繰り返して、『なぜあのシーンで、あんなふうに演じてしまったのか』と自分を責めてばかりで」

そして第2の転機が訪れる。偶然参加したパラグライダーの集まりで、将来の夫となる、時任三郎さんと出会ったのだ。友人としての付き合いから始まり、2年の交際を経て24歳で結婚し、3人の子どもにも恵まれた。

「それまで頼る人がいなかったという思いが強かったので、8歳年上で優しい夫には、何でも任せておけるという安心感もあった。でも、そんな恵まれた環境だったのに、なぜか私のなかには空虚感があったんです。原因は自分でもわからなかった。それだけに辛かったですね。幸せになればなるほど、『なぜ私が、こんな幸せを手にできているんだろう』って。でも、誰にも打ち明けられなかった。夫と出会って一時はよくなっていた体調もまた悪くなり、心も荒んでしまいました」