ラトビアの夏は誰もがウキウキする季節。
冬は寒さが厳しく、日照時間も極端に短いのに対して、夏は爽やか、花が咲き乱れ、果実に恵まれ、夜中を過ぎても薄明るい、、、終わらない一日を、人々は思い思いに満喫するのです。
夏至の夜は、各地で一番長い日をお祝いするお祭りが開催されます。首都のリガなどでは、大きな野外音楽堂でライブのような形式をとっていて都会的なスタイルなのです。それも良いのですが、地方の小さな地域の人々が集まって開かれる、昔ながらの土臭いお祭りを体験したくて、私はバルト海に面した小さな村、パペのお祭りを訪れました。
日本の日照時間の感覚でいうと、夕方にあたる18時あたりは全くの昼間の様子。ただし緯度が高いので、太陽の描く軌跡が日本とは異なります。(北海道あたりに行くとちょっとラトビアに近い感覚がありますが)ずっと少し斜めからの日が差し、何もかも美しくあぶり出されるのです。そう、フォトグラファーにとってはずっと「いい光」に恵まれ続ける、絶好のコンディションなのです。
民族衣装を身にまとった人びとが集まって、ご馳走をつまみ、ベリーワインを飲んで語らっています。なんとも美しいのが、みんなが頭にかぶっている手製の花冠。まるで花の精が集っているようです。女性だけでなく、男性も大きな木の葉で作った冠をすえていて、それが自然と馴染んで爽やかでカッコいいのです。おとぎ話の中に迷い込んだような光景を前に、心がうきうきと躍ります。
23時少し前、暮れなずんだ浜に皆が歩き出しました。少年が松明に火をつけます。それを囲むようにして皆で祝いの歌を歌います。言葉が全くわからなくても、歌の伝えたい喜びや感謝はなんとなしに伝わってくるもので、青白い光の中に響く歌をずっと聞いていました。
浜からまた場所を移して、祭りは朝まで続きます。焚き火を囲んで踊りまくり、歌いまくり、そして飲みまくります。火のまわりをぐるぐるとまわりっぱなしなのに、みんな疲れを知りません。むしろどんどん元気になっていくようにさえ見えるのです。
一番長い夏の日、今年も私たちにこの日を迎えさせてくれた自然の神々にありがとう、そしておめでとう。日本と同じく自然信仰が強く根付いているラトビア、火にも、太陽にも、海にも、木にも神様が宿っているのです。
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