ミモレ大学 京都校の第1回、7月21日の東京校の最終講義に登壇したのは女性向けキャリアエージェント「Waris(ワリス)」キャリアカウンセラーの島谷美奈子さん。「これから5年間のキャリアプランニング」をテーマに講義を行い、それを踏まえた上で、「自分の得意、不得意を知る」というワークショップを行いました。
多様な価値観を持つ人材を活用する時代
キャリアを中断してしまった女性にとってはチャンス
「大森編集長がWarisのセミナーを受けて、転職しちゃうんじゃないかというくらい衝撃を受けたので、今回、ミモレ大学でもぜひお話いただきたいと思ってお招きしました」というミモレ編集部・川端の紹介で登場したのは、島谷美奈子さん。物腰が柔らかく、それでいてしっかりと悩みや迷いを受け止めてくれそうな存在感を放っています。
本人曰く保守的な家に生まれ、「田舎から出てやる」という思いで東京の大学に進学し、人生を切り開いていったという島谷さん。15年以上にわたり人材ビジネス業界や公的機関等でキャリアカウンセリングに従事しているという大ベテランでもあります。
「ミモレ読者のみなさんはファッションに興味がある方が多く、装いなどにも気を使っている方が大勢いらっしゃいます。ところが、自分のキャリアともなると自信がなかったり、こちらからお聞きしても『大した経歴がないんです』という答えが返ったりしてきます。ミモレ世代といえば立派な大人。キャリアについて自分の口で語れるようになってほしいんです」
そう話す島谷さんが所属するWarisでは、フリーランスとして働きたい個人にプロジェクト型の仕事を紹介し、育児や介護などでやむなく離職してしまいブランクがある女性への支援を行っています。
「Waris」とは少し聞き慣れない単語ですが、実は、アフリカ・ソマリアの言葉で、「砂漠に咲く花」の意味があるそう。どんな環境であっても、花を咲かせたいという思いが込められているとのこと。島谷さんはまず、ミモレ世代を取り巻く労働環境について説明をはじめました。
「多様な価値観を持つ人材を活用する時代に来ています。それは、16歳から64歳の労働力人口の不足が深刻化しているからです。そのため、定年以降のシニアや外国人、女性への注目が高まっています。ところが、女性は結婚して第一子を出産するタイミングで5〜6割もの人が会社を辞め、キャリアを中断してしまっています。こうした女性たちの子育てが一段落し、いざ再就職しようと思うととても困難でした。お迎えなどで時間の制約がある女性や、仕事のブランクが長い女性に対して、企業は会おうともしなかったのです」
ところが、最近企業側に変化が表れているという島谷さん。それは3〜4年前までなら会おうともしなかった企業が、そうした女性にも門戸を開くようになってきたというのです。
「キャリアを中断する前に、スキルや経験があれば会ってくれるようになったんです。これって大きなチャンスだと思いませんか?」
自分の弱みよりも強みを見つける
時代のニーズを的確にとらえ、自ら動くべし
2016年に女性活用推進法が施行され、「2020年までに企業の女性管理職の割合を30%に」という目標を政府が掲げています。
「仕事でリーダー経験があり、管理職になりたいと思っている人にとっては大チャンスです!」
と島谷さん。最近は「実現が難しいのではないか」と雲行きが怪しくなっていますが、社会全体が女性のみならず、人々の働き方について真剣に向き合う時期に来ていることは間違いありません。実際、非正規雇用制度の改善を推進する動きや、リモートワークや在宅勤務といった新しい働き方を模索している企業もあります。また、上司が部下の生活面にも配慮し、仕事もプライベートも満足度を高めることで、会社の業績アップにもつなげようという試みも行われています。
「中小企業などはまだまだ追いついていない部分もありますが、時代は着実に変わっています。私自身、数年前と今とでは全然違うことを実感しています。もしみなさんがそういう変化を感じていないというのであれば、もっと自分から情報収集をした方がいいと思いますよ」
いい大学を卒業して就職しさえすれば会社が手厚く教育してくれ、与えられた仕事をこなしさえすればいいという時代ははるか昔のこと。島谷さんは「自立型人材」を意識してほしいと強調します。これは、自分で決めたことを自分で実行できる能力を持つ人材のことで、こうした人たちに求められる条件を6つ紹介挙げました。
①リーダー職以上の経験
②コアな専門ジャンル
③プランニングから実行までの経験
④タイムマネジメントスキル
⑤提案力、改善力、対応力
⑥コミュニケーションスキル
また、女性が特に注意すべきポイントとして「体調管理」を挙げた島谷さん
40代に入ると、女性ホルモンの減少により、更年期障害の症状が現れ始めます。特に症状は感じないという方も、30代までと比べて、体力が落ちたことを実感する瞬間があるのではないでしょうか
「女性が管理職を辞退する理由の7割が更年期障害という調査結果もあるんです。体調が悪いのに無理をしていたために症状が悪化し、仕事自体を辞めなくてはならない人もいます。早いうちから病院に通い、自分の体と向き合っておくことも大切ですよ」
こうして列挙すると、今までの働き方や価値観が通用しなくなり、ますます大変な時代になったと感じる人もいるかもしれません。でも、こうした変化を女性活躍の場が広がり、働き方が選べる時代になったととらえることができれば、飛躍のチャンスが到来したとも考えられます。島谷さんは、「情報収集して時代のニーズを的確にとらえ、自分からアクションを起こせばチャンスはぐっと広がる」と背中を押してくれます。
「女性は真面目な人が多いから、自分の足りない部分や弱みに注目しがち。既に持っている強みが何かを洗い出して、そこをのばしてみてください。また、あまり好きではないけど得意なことにも注目してみてください。長く続けられている仕事や、人から評判のいい仕事も強みの一つ。自分の強みを知ることができれば、活躍できる場を自ら選択できるようになるはずです」
会場ではその後、島谷さんのアドバイスで自分たちのキャリアを振り返り、参加者同士で発表することを通して、自分の強みを模索するワークショップが行われました。
「強みにフォーカスするのは大切ですが、弱みはリリースしてしまっていいんです。『これができない』『あれはまだやれてない』ということは考えなくてもいい。得意な人にやってもらったらいいんです」
60分という限られた時間にぎゅっと濃縮された、キャリアプランニングのノウハウ。参加者にとって、かなり濃密で有意義な時間となったようです。
受講者の方から届いた感想PICK UP!
「自分では何でもないような体験でも、スキルを使っていると気付いたこと。まだ5年後のことは思い浮かばないが、思い描けるようにしたい」
「キャリアについてちょうど悩んでいる時期でしたので、個人ワークの数々はとても今の自分に効果があると感じました」
「弱点を捨てて得意なことにフォーカスするというお話は最近自分でも考えていたことで、今日のお話が更に自分の背中を押してくれたように思います」
構成/川端里恵(編集部)
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