大阪万博が開催された1970年は私の生まれ年。岡本太郎氏の作品、「太陽の塔」も私と同じ歳というわけです。あの塔が万博会場で組み立てられていた時が、私が母の胎内にいた時期とかぶると思うとなんだか面白いなあ、同い年。太陽の塔のあの存在感たるや、これほどに人の記憶にピタッと残るものってそうないと思うのです。原始的とでもいいましょうか、非常に単純な造形でありながら、巨大で、目がたくさんあって…異物感、驚異、親しみ、いろんな感覚を人にもたらす魔力のある存在です。そもそも、あの太陽の塔の中に入れる、そして何かがあの中にあるなんて思ってもみなかったのですが、万博当時はこの内部の展示を世界中から集まったお客様が楽しんだというのです。一体どんなものがあの体の中にあるのでしょうか。
太陽の塔の内部が公開になっていると聞いていても立ってもいられず、万博公園に行ってきました。モノレールの万博公園駅に降りたち、まずはご挨拶。これこれ、この違和感、唐突に現れる金色の顔です。今までに何度かこの場に対面していますが、ウルトラマンのワンシーンに入り込んだような、摩訶不思議な世界の入り口に立つような気持ちになります。今はこの通り太陽の塔だけが公園の真ん中にストンとそびえているのですが、万博開催当時は丹下健三氏の作った会場の屋根を突き抜けて塔が立っていたというのですから、その圧倒的な破壊力といったらないです。あたかも塔がこの場にはじめからあったかのような仕掛けとでもいいましょうか。そんな会場作りが認められたなんて、当時の日本って素晴らしいとおもうのです。何かを作り上げることに対する懐の深さがあるではないですか。
色々話しだしたら止まらないので、外側から見える太陽の塔に関してはこの辺でとめておいて…さて、いよいよこの塔の内部に入り込みます。内部の撮影が禁止されているので写真はありませんが、それでかえってみなさんが見てみたいと思われるかもしれません。
あらかじめ予約しておいた時間に入り口に集合し、案内をひとしきり聞いて、中に入って行きます。万博当時はエスカレーターだったという部分が階段に改築されていて、階段を登りながら展示を見てすすみます。一番下の階から見学ははじまります。
これは凄い、生命の進化を表現したというこの展示、「生命の木」があの太陽の塔の中に生きているのです。生命の進化が下から上へとつながっていきます。入場してまず遭遇するのは原生類時代のアメーバーやキノコなど、照明や音楽(黛敏郎氏作曲)の効果であたかも揺らいでいるように見えるのです。そこから目を上げると、三葉虫時代、魚類時代、両生類時代、は虫類時代、哺乳類時代とつながっていって、最後には小さな小さな原始人たちがいます。これだけ大きな、縦長の展示はなかなか見ることがありませんから、それだけでも圧巻なのですが、色使いといい、生命体の大きさのデフォルメといい、岡本氏の作戦があちこちに見受けられます。私がここで展示の内容を細かく説明してしまうのはあまりにも勿体無いので、みなさんにも是非目撃していただきたいのですが、ここで岡本氏が表現したのは人間のちっぽけさなのではないかと私には思えてくるのです。
いろんな生命体の先輩方に支えられて何十億年もの時を経て今を生きている人間たち、太陽がすべてを包み込んでいるというこの塔の現すところ、大阪万博記念公園から、太陽の塔の光る眼から、メッセージは発信され続けているのです。
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