スタイリスト、ミモレコンセプトディレクターの大草直子が着こなしのアイデアや日々の思いを綴ります。
長女の日南子が、12年間通った学校を卒業しました。もちろん高校生の終了過程を終え、大学生になる、という事実も感慨深いのですが、この素晴らしくも自由でタフな学校から、外の世界へ我が子が飛び出していく――という事実に、心から感動し、涙が止まりませんでした。
12年前、この学校を選んだのは、夫でした。再婚して間もなかった時期で、夫と私、日南子、そして産まれたばかりのリオ、家族全員で「家族」を作っている最中。まだまだコミュニケーションもうまくできず、それぞれがお互いとの信頼関係と居場所を探しているところでした。
そんなときの日南子の小学校進学。実家の両親も含め、何度も話し合い。都心の小学校の挑戦も考えましたが。とにかく優先したのが、彼女が「学校に行きたくない」と言わなくても良い環境。お父さんは外国人で、産まれたばかりの弟はダブルアイデンティティ。無邪気にからかわれたり、人とは違うステップファミリーであることを理由にいじめられたりしないだろうか――。私自身、12年間通った学校でいじめに遭い、小学4年生の時、6か月の登校拒否を経験しています。
その時の辛い思いを、親の選択を理由にさせたくない、と思っていました。
と、少し後ろ向きの理由で選んだ場所でしたが、この学校の校風、そして教育理念は日南子のキャラクターに面白いほどフィットし、彼女の能力と個性を存分に伸ばしてくれました。
個性が最も美しい宝物であり、だからこそ、人がもつその宝物もリスペクトしましょう。
皆で遊ぶことも、1人で本を読むことも、同じくらい大切です。
外見も考え方も、人と違うことを大事にしましょう。
子供の仕事は遊ぶこと。たくさん寄り道をして遊びましょう。
支給される教科書はなく、基本、先生の手作り。音楽の授業も、自分の身体を楽器として使う合唱のみ。本気で声を出して歌う子供たちの姿と歌声に、授業中でも私たち親は泣いてしまうほどでした。
小学校の卒業式の校長先生のご挨拶は、ご自身の後ろに立つ子供たちのほうを振り返り、「大切な子供たち、あなたたちの大切な6年間を一緒に過ごさせてくれてありがとう」
そして私たち親には「これから中学生になり、自分たちでもコントロールできない感情の動きや、様々な変化を迎える子供たちを、今まで以上に愛をもって見守ってあげてください」
先生方の言葉や、行動で、私はたくさんの子育てを学び、私自身の子供時代を肯定していたのだなあ、と今また思います。
こうして書くと素晴らしいのですが、12年前はもちろん、そのマイナス面もたくさん想定され。
自分は自由に生きてきた割に、その頃はまだまだ、偏差値や世間の評価や常識なんかにとらわれて、なかなか、「“学校に行きたくない”と言わなくて済む学校」を私自身が決めきれずにきたのです。
そんなときの夫の一言。
「この学校は、きっと日南子は気に入るし、すごく楽しいと思う」
日本の小学校のシステムや、名門校と言われるゆえんなどの、情報の刷り込みがない彼は、クリアな目で見ていたのだと思います。
結局、この学校に12年間お世話になった彼女。
一度も、「学校に行きたくない」と言いませんでした。
書ききれないほどの思い出、日南子の成長に伴う、嬉しかったこと、難しかったことにも、卒業式という日は、感謝するタイミングになりました。
最後に、この日に着物を選んだ理由。
12年間頑張り続けた日南子へ、学校へ、先生方へ、娘の友達へ、一緒に育ててくれたママ友へ。
感謝を表したくて、着物を選びました。
母から借りた総絞りの着物。
薄いラベンダー、帯は松や鶴などが描かれた、慶事にぴったりのものを。
服では絶対に選ぶことがない、曖昧で清らかな色で、たくさんの「ありがとう」を母親として表して。
バッグは以前に手に入れた、ボッテガ・ヴェネタのノット。
ストールはカシミヤのジョシュアエリス×シーズンスタイルラボのダブルネーム。
両方とも、普段は洋服に合わせているものです。
この日の肌作りや、着物の詳細は、また次回にご紹介しますね。
なかなか短くできず(笑)、長いコラムにお付き合い頂き、ありがとうございました。
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