先週末は、大草ディレクターの長女の高校の卒業式でした。娘のハレの日を祝う装いに選んだのは、淡い紫の総絞りの訪問着。着付けとヘアメイクはプロの方にお願いを。式典にふさわしい華やかさと格式がありながら、着くずれたり、ヘアやメイクが崩れたりしないためのポイントをお届けします。
「留袖の次に格の高い“訪問着”は、卒業式や入学式などの式典を始め、フォーマルな席にぴったりです。お母様から譲り受けた総絞りというのもとても素敵ですね。淡い紫はみずみずしさと気品、春らしい華やかさもあり、春の光やまわりの景色ともマッチします」と語るのは、今回着付けを担当した着物家の伊藤仁美さん。
ご自身も着物姿でいらした伊藤さんの帯は「やの字結び」。「動きやすく、ソファーやタクシーなど背もたれにももたれられて便利なんですよ」と朗らかに話す伊藤さん。
自分で着る時は「着物なら5分、浴衣なら2分に満たない」という(!)その神業のような素早い着付けに、編集・川端、必死に食らいつき“手早くてラクで華やかな”着付けの秘密を徹底レポートいたします。
伊達締めは「下を締めて、上はゆるっと」
「帯や帯締めで最後に締めるので、胸紐や伊達締めはあまりぎゅうぎゅう締め上げません。下側はぴったりフィットして、上側は少しゆとりがあるくらいがちょうど良いです」(伊藤さん・以下同)
「前板もやや後ろ高に巻くことで、板が斜めになり、胸の下に少し空間ができます」
「すでに全くどこも苦しくなくて今までの着物の印象と全然違う!」と驚く大草ディレクター。
生地は「引っ張るのではなく、空気を抜く」
「体と布の間の空気を抜くように整えていくと、自然に体にフィットして苦しくないんです。おはしょりや、おはしょりの端のあしらいなど、帯をしてしまえば見えないところも、美しく仕上げることも着崩れないポイントです」
衿合わせの角度は「鋭角なら知的に、広角なら可愛らしく」
衿合わせの角度と重ね衿を見せる分量は、着る人の女性像を印象付ける着付けの要。その人の顔の形や雰囲気、今日の場にふさわしい印象などを考慮して形づくっていくそう。
「大草さんの場合は、お顔立ちや雰囲気も知的でシャープ、クールな印象なので鋭角に合わせました。扇のように広く合わせると可愛らしく幼い印象に。今日はハレの日なので、重ね衿もできるだけ細く見せ、キリッと緊張感を演出しています」
帯は「どこを見せ、どこを見せないか」
「四季折々のおめでたいモチーフが彩られたなんて美しい帯なんでしょう!」と伊藤さんも感嘆した大草家の帯。「“着物は背中”。帯のどこを出すかを考えて締めていきます。今日は鶴をメインに、上下、膨らみともにまっすぐに。聡明なお嬢様の門出をお祝いしましょう」
「帯締めは、丸組より平組の方が品格が上がります。」とのアドバイスに、金銀の平組を選んだ大草ディレクター。「着物は上前(左側)のほうが美しいので、金を左側に」
所作を美しく見せる“可動域”と“丸み”のあしらい
「裾の真ん中にかけて丸みを出すように着付けると、足を出した時に柔らかな動きが出てとても女性らしく見えます」
「お袖も可動域を考慮して少し引き出しておきましょう。着ていてラクですし、所作も自然と美しくなります」
えもんは「抜きすぎず、詰めすぎず」
「着物には上品な色気が必要です。色気を演出する“えもん”は、抜きすぎるとだらしなく見えるので、前の合わせとバランスをとって首が美しく見えるよう調整を。抜いた衿の角度も、大草さんのキリッと知的なイメージに合わせて鋭角に。丸く作ると可愛らしい印象になります」
<そして完成したのがこちら!>
「1日中まったく着崩れることなく、着ていてラクでした!」と大草ディレクター。「着物はルールや種類がわからなくて難しい」「着ていて苦しい」と尻込みしてしまいがちですが、ご家族の思い出に残る大切な日の着物の装いは格別ですね。
次回は、あくまで“娘が主役”の日の母親にふさわしいヘアメイクと崩れないポイントを解説します!
ヘア&メイク/菊池かずみ
撮影・取材・文/川端里恵(編集部)
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