フードジャーナリストの小松宏子さんが、最新の食のトレンドを紹介します。
今回、ご紹介するのはチーズ好きに朗報の、チーズワインビストロです。
女性って本当にチーズが好きなんですよね(笑)。恵比寿に、その聖地ともいえる、予約困難店「スブリデオ レストラーレ」というチーズビストロがあるのをご存知ですか?
レストランでのチーズというと、食後に何種かを取り合わせていただくことがほとんどで、チーズを溶かして食べる料理は、グラタン系かラクレットやフォンデュなど、少しだけ。チーズの醍醐味はなんいっても、加熱したとろ~り、ですよね。
そのとろ~りが、各国のチーズでさまざまに味わえる、チーズ好きには夢のようなお店なのです。
で、今回ご紹介するお店は二子玉川の駅から5分の立地に昨年6月にオープンした「バール ア フロマージュ スーヴォワル」。「スブリデオ レストラーレ」でソムリエを務めた谷田浩巳さんがオーナーとして独立したお店です(それにしても、なんでそんなに覚えにくい名前をつけるのかと、師匠が師匠なら弟子も弟子・笑)。
15人も入れば満席の愛らしいお店の、カウンターの前には寿司ネタよろしく、チーズケースがあり、旬のチーズが並びます。テーブルセッティングのお皿の上に牛型に折られた黄色いナフキン、そして鼻に見立てた黒い小さなスプーンと、なんともユーモラス。
ところで、「スーヴォワル」とは、フランス語で「膜の下」という意味で、ワインの製造方法の名称。フロールと呼ばれる「酵母の膜の下」でワインを熟成させるタイプのワインのことで、シェリーが代表的ですが、フランス・ジュラ地方(東部の山岳地帯)で造られるワインは主にこの製法。同じ地方で造られる、コンテチーズとジュラのワインの相性に心酔してこの仕事を始めたという谷田さんならではの命名なのですが、いかんせんちょっと難しい。というわけでシグニチャーディッシュは、コンテチーズのリゾットや、ジュラのワインで煮込んだ鶏肉の「コックオーヴァンジョーヌ」などなど。ぜひとも、黄色みの強い辛口で深みのあるジュラの白ワインと共に味わってください。
本日のアミューズは、コンテチーズの中央の部分をスプーンですくって、一口。コンテはフランスでも最も消費量の多い、人気のチーズですが、フロマジュリー(チーズ専門店)に行っても、中心部だけを買うことはできないので、これは、役得。チーズは中心から外側へ向けて熟成が進みます。だから、40kgにもなるコンテチーズでは中心部はとてもマイルドなのです。
冷前菜は、開店以来の人気メニューという、「フォアグラとロックフォールのブリュレ」。
フォアグラやロックフォールチーズを溶かし込んだ卵液をプリンのように焼いて冷やし、キャラメリゼしたもの。まさに、クレームブリュレの手法です。濃厚でクリーミーな味わいはやみつきに。
温かな前菜には、「カチョカバロ・ディ・ブファラ マルメラータソース」。カチョカバロとはイタリアのモッツァレッラチーズを紐につるしてドライにしたもの。ちなみにブファラは水牛の乳製です。南のカンパーニャ産が有名ですが、北のロンバルディアでも作られていて、そのあたりではマーマレードと合わせる食べ方があり、それにヒントを得たものだそう。広島レモンの自家製マーマレードとのコントラストが絶妙です。
そしてマストオーダーが「濃厚流しコンテリゾット」。生クリームとコンテを溶かしこんだクリームでリッチに仕上げたリゾットを、大きなコンテチーズをくり抜いた中に流し、ゲストが自らコンテの器から木のスプーンで削り出します。リゾットとコンテが一つになった味わいは、う~ん、至福!
濃厚流しコンテリゾット。リッチな味わいの中に、しめじなどのきのことくるみが歯応えのアクセントになって美味。¥2480
そして何より嬉しいのは、こちらはまだまだ予約困難店ではないこと。6~8人のテーブル席もありますから、女子会にも最適。早速、予約!です。
「バール ア フロマージュ スーヴォワル」
東京都世田谷区玉川4-5-6 尾嶋ビル1F
17:00~22:00(L.O.)ランチは5名以上の予約のみ営業
定休日:火曜
アラカルト主体。平日限定コース¥3800~、パーティセット¥4500
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