「ヒュッゲ」な生活を送るために生きる?!


「ヒュッゲ」という言葉をご存知でしょうか。

デンマークの女性に「私たちの目標はヒュッゲな生活を送ることにあるの」と言われたことがあります。この「ヒュッゲ(Hygge)」という単語には、「人と人との関係を結ぶような、心地良く温かい空間や時間」といった意味があるのだそう。デンマークの人は、老若男女を問わず、皆ヒュッゲな生活を送るために学び、働き、家族を持ち、家を買い、インテリアを整えるのです。リラックスしてゆとりを持って生活できるように、一生懸命集中して働くのです。

デンマーク人の多くは「初任給で好きな椅子を買う」のだという。座り心地のよい、憧れの家具を買って、自分が快適に過ごせる空間を作ることを大切にするのだ 写真提供/行正り香

大切なものを優先するための時間の使い方は、私がデンマーク人に教わった素晴らしい生き方のコツです。素敵だなと思いつつ、本当の意味で私が余裕のある暮らしが楽しめるようになったのは40歳を過ぎてからのことでした。

会社員だった頃はとにかくがむしゃらに仕事をしていましたし、子どもが生まれてからは、どうやって毎日を過ごしていたのか記憶にないくらい忙しい日々でした。ただそれらの極端に忙しい日々があったからこそ、今になって、ゆとりのある生活への価値が見出せたのかもしれません。

今の私が働く量は、もしかしたら会社員時代より多いくらいです。ですが、経験を積み、ゆとりを大切にしようという目的意識をもって仕事をしているので、効率を考えて仕事をすることができるようになったと思います。

 

ある意味、デンマークは日本より厳しい国


ちなみに、デンマークは老後、ほぼ年金だけで生活することができますが、そのぶん現役時代の税金が高く、お給料の5~7割を国に持っていかれます。つまり年金の先払いをしているわけですね。20万円のお給料でも10万円引かれてしまうので、若い人が独立して暮らすのはかなり大変だと思います。

では実家にいればいいかというとこれも難しい。デンマークでは18歳以上の子どもが親と同居していると、税金が高くなってしまうのです。ですから特別な事情がない限り、子どもは皆18歳になった時点で実家を出ます。一人暮らしで寂しいとなれば、自然と結婚して家庭を持つことを考えるようになりますから、まさに一石二鳥の国策と言えるのかもしれません。

大学生がもらえる学生手当も、同じく半分を税金として持っていかれます。日本人からすると「事務手続きが増えるから、最初から税金を差し引いた額を渡せばいいのに」と思いますが、こうしてきっちりと支払う癖をつけさせることで、学生のうちから税金に対する意識を植え付けていくのですね。

残業も子どものお受験もなく、学費も医療費もタダ。老後は年金でゆったりと暮らせる幸福度の高い国、デンマーク。社会制度が整っていて日本に似ている部分も多い。その反面、税金も高ければ物価も高い。終身雇用もありません

だからこそいい家に住んでバカンスを楽しみ、ヒュッゲな生活を送るには、男性も女性も同じように働き、自立していく必要があります。私は日本もデンマークも大好きでそれぞれに良い所がありますが、デンマークは離婚もとても多く、ある意味、日本より厳しいところもたくさんある国だとも言えるかもしれませんね。

ただ、その厳しさを子どもの時代から普通に受け止めており、「将来の不安」を感じていない。一生懸命働くことで自分の優先順位が高い生活を求めることができる生き方は、大いに参考になるのではないでしょうか。

構成・文/上田恵子

「居心地よく温かい空間や時間」という意味のデンマークならではの言葉、「ヒュッゲ」をキーワードに、家作りと暮らし方を提案。行正さんの自宅やスタジオ、デンマークの友人の自宅の空間作りがたくさんのビジュアルと共に再現され、家具の選び方やリフォームのコツなどもまとめられた一冊。


現代ビジネスの元の記事はこちら>> 

大阪で開催!
行正り香のインテリア<サイン入りインテリア本付き>

日程 : 
2019年4月21日 15時40分受付・16時〜17時半
インテリアの本、第二弾の出版を記念し、4月21日、大阪にて講演会をさせていただきます。みなさまと、心地よい空間とは何か、どのようにインテリアを作っていけばよいかなど、具体的にお話をさせていただきます。先着順となります。

場所は<イオンコンパス大阪駅前会議室B>〒530-0001 大阪市北区梅田1丁目2-2 大阪駅前第2ビル15階となります。

申し込みサイトはこちらです。