「運命の分岐点」だったY字路


12回で印象に残ったのはY字路です。
日射病で朦朧となった四三がY字路で行く路を間違います。
ストックホルムで四三がトレーニングで走っているとき何回もY字路が出てきて、間違えた路に行きそうになって注意されることもありましたから、ああ、またやってしまったんだと思います。
Y字路といえば、「いだてん」のタイトル文字を制作した横尾忠則さんの作品にY字路シリーズがあります。故郷の兵庫県でみつけた三叉路から描きはじめ、膨大な数のY字路を横尾さんは描いています。どの作品も左右に分かれて行く路に不思議な思いが沸いてくるものばかり。
実際、Y字路は、すこしこわいものです。まっすぐ歩いてきて、左右に分かれた路のどちらを選ぶことでまるで違うところに行ってしまわけですから。最初は同じところからはじまったのに、Y字にどんどん間が広がっていくのです。気づけばまるで違うところに行ってしまう。あっちの路を行けばよかったと後悔するか、はたまた、まったく違う可能性が広がっていると楽しく感じるか、三叉路を見るだけで無限に想像が膨らんでいきます。
「いだてん紀行」で「運命の分岐点」と呼ばれる「いだてん」のY字路はとても示唆的です。子四三が路の間に立っているのも幻想的でした。スタッフの方々はストックホルム中のY字路を見てまわり、四三が間違えてしまいそうな道を選んだそうです。ストックホルム中のY字路……いっぱいありそうで考えると気が遠くなりそう……。そういえば、「いだてん」のロゴの三本足も三叉路と思えないこともありません。こんなふうに「いだてん」って自由に想像を巡らせることができて、ほんとに懐の広いドラマです。

 

28日、萩原健一さんの訃報が日本を駆け巡りました。26日に亡くなったそうです。『傷だらけの天使』『太陽にほえろ』『前略おふくろ様』など名作ドラマをはじめ、映画や音楽活動でも活躍された、唯一無二のかっこよさと演技のうまさを誇った萩原さん。なんと、「いだてん」にこれから出演されるそうです。高橋是清役で第25回から。主な出演シーンは収録を終えられてからお亡くなりになったようで、遺作になるのではないでしょうか。楽しみというのもあれですが、萩原さんの最後の名演を心して見たいですね。

【データ】
大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』


NHK 総合 日曜よる8時〜
(再放送 NHK 総合 土曜ひる1時5分〜) 
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
演出:井上 剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁
制作統括:訓覇 圭、清水拓哉
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ、綾瀬はるか、生田斗真、森山未來、役所広司 ほか

第13回 「復活」 演出:井上剛

 

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 
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映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

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文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

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ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

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メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

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ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

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ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

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ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

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ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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