沢口靖子が演じる法医研究員・榊マリコ

20年目を迎えるお化けドラマ『科捜研の女』がこの4月から1年にわたって放送されます。19シーズン目にして、ロングランの展開は同ドラマ初の試み。京都を舞台に四季折々の季節感あふれた最新科学捜査と、毎度やきもきさせられている「ドモマリ」の関係性をみせ続けてくれます。


連ドラ視聴率トップ5の常連組、20年の節目にビックプロジェクト


『科捜研の女』と言えば、名実ともに人気があるドラマ。前回の2018年10月クールに放送された「シーズン18」の放送では最終話が14.7%の高視聴率をマーク、全8話の平均視聴率も12.5%(いずれも関東地区、ビデオリサーチ調べ)と、同クール民放連続ドラマのなかで4位でした。ランキングを過去に遡ると、2クール放送された2017年の冬は3位、2016年の冬も3位。新しいコンセプトとキャスティングに力を入れた新作が並ぶなかで、安定感を保っていることがお化けドラマと言われるゆえんです。
舞台は京都府警科学捜査研究所、通称・科捜研。そこに務める、沢口靖子が演じる法医研究員・榊マリコがヒロインです。マリコを中心に、ひと癖もふた癖もある研究員たちのキャラクターが、各々の専門技術を武器に事件の真相解明に挑む姿もみどころです。そして、「犯人が分かったわ!」となるまで、そんな彼女彼らたちの最新の科学捜査テクニックが披露され、合間に豊饒な人間ドラマも適度に絡み合う。そんなミステリードラマの王道が展開されています。
1999年10月からの1クール放送でスタートした『科捜研の女』はこれまで1クールまたは贅沢に2クールで放送されてきました。制作、放送するテレビ朝日が開局60周年、『科捜研の女』そのものも20年目に入る節目に、この4月から春・夏・秋・冬の4クールにおよび1年にわたり放送されるというわけです。ロングラン放送が発表された途端に、ファンからSNS上で心躍る声がつぶやかれています。ちょうど発表された時期は奇しくも『科捜研の女』ならぬ、よく似たタイトルの男版が他局で放送が始まった時でした。本家と比べて見てしまうたびに、本家の良さを改めて実感するファンも多かったはず。ビックプロジェクトに対する想いもいっそう募りました。
20年間にわたり主人公の榊マリコを演じてきた主演の沢口も「節目の年に大役のお話をいただき、心踊りました」と興奮気味。「作品への評価と受け止め、ご期待に添えるよう心して務めたいと思いました」と決意も新たにしたコメントを発表しています。
 

暑い時期だからこそ成立するトリック、ドモマリは恋愛に発展しないのか


1年のロングラン放送によって、期待されることもいくつかあります。そのひとつが2011年以降、放送されていなかった4月、7月クールの放送が復活します。長らく、寒い時期は空気のような存在で放送されていました。それが春から夏、さらに秋と冬にかけて初めて放送されるのです。京都の四季折々の風景が映し出されていきます。
今年2月2日に開催された一般社団法人「放送人の会」・公益財団法人「放送番組センター」主催の公開セミナー「名作の舞台裏」で『科捜研の女』が取り上げられた際、登壇したメインライターの脚本家・戸田山雅司がこんなことも明かしています。
「1年もやらせてもらえるなんて脚本家冥利に尽きますね。今までは秋から冬までの京都を舞台にすることが多かったですが、1年間となれば四季折々の京都を舞台にできます。例えば、夏の暑い時期だからこそ成立するトリックもありますのでファイトが湧きますね」。
『科捜研の女』では毎日のように発表される実際の科学論文から、ドラマで展開できそうな最新科学のネタが選ばれているそう。もしかしたら、惜しくもボツとなっていた春、夏にピッタリの科学ネタが今回、披露されるかも?「科学は嘘をつかない」を全うしながら、新鮮さが加わることに期待が高まります。

そして、何といっても気になるのは「ドモマリ」こと、マリコ(沢口靖子)と土門刑事(内藤剛志)の関係性の展開。せっかくの1年にわたる機会に「進展も加えて欲しい派」と、敢えて変わらず「恋愛には発展しないで派」の対立構造の盛り上がりもあるでしょう。
先の「名作の舞台裏」の会で、沢口靖子と内藤剛志のふたりも登壇し、その辺りについて言及しています。
「普段、内藤さんと関係性の話はあまりしていません。個人的には同じ大阪出身で、内藤さんの飾らない気さくな性格に甘えさせていただいています。それをベースにマリコと土門の関係があるのですが、二人は事件に向き合う正義感と使命感が似ていると思います。恋愛のちょっと手前の、信頼と尊敬の強い絆で結ばれている関係でやらせていただいています」(沢口)
「土門とマリコで“ドモマリ”とも言われておりますが、初めて土門が登場した時は科学と刑事のカンと経験値が対立関係にあったんです。でも『科捜研の女』ですから、いつも刑事が負ける(笑)。それを繰り返しているうちにチームになってきたんです。それは見てくださると皆さんが作ってくれた関係でもあると思います」(内藤)
要するに、現段階では「恋愛には発展しない」路線が濃厚でしょう。でも、それは願ったり叶ったりかも。ともすれば、女性が主役のドラマは恋愛、結婚がサブストーリーの中で当たり前のように加わりがち。シーズンを重ねていくドラマはなおさらです。それを20年にわたり、「科学一筋」の“榊マリコ”を貫いていることに骨太さを感じ、ファン層を形成してきたとも言えます。なお、同一人物による主演、同曜日、同時間帯放送のドラマとして最長記録も保持。マリコを演じる上で沢口は「真実を突き止めるための情熱。信念を持って、どんな時もポジティブに、諦めない姿勢」を大切にしているそうです。
キャラタクーの安定感と新しい科学トリックを1年間にわたり、飽きさせない。そんな変わらないことも期待しながら、初の挑戦を見守りたいところです。

<作品紹介>
『木曜ミステリー 科捜研の女』

テレビ朝日系にて、2019年4月18日より毎週木曜よる8時放映。
監督:森本浩史、田﨑竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
出演:沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美、風間トオル、金田明夫、斉藤暁、渡部秀、山本ひかる、西田健、石井一彰

 

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。