②老舗食器工房のあっと驚くカオスに埋もれて、お気に入りを探す

東磁廠(ユットンチーチョン)


1928年創業の粵東磁廠は、香港最古の広東風磁器工房。工業ビルの一角の400㎡もある店内には、あらゆるデザインの食器が積み重ねられています。

ときには通り抜けるのに緊張するほど食器が重なっているエリアも!

中央には職人さんの作業場があり、奥に控えている三代目店主ジョセフ・ツァオさんは、「かつて香港に300軒以上あった陶磁器工房も、商業生産を続けているのは今やうちだけに。ここにも昔は数百人の職人がいたんです。最近の若い人は興味を持ってくれなくて、職人も高齢の4人だけになってしまいました」と話してくれました。

店主ジョセフ・ツァオさんと職人さんたち。

東磁廠と言えば有名なのが、ペニンシュラ香港で使用されている赤と白の花柄のシリーズ。この柄自体にはさらに古い歴史があります。「最初にこの柄を作ったのは、1975年。当時のマックリホース香港総督夫人から、古い中国磁器と同じ柄の青で、ディナーセットを作ってほしいとオーダーが入って」とジョセフさん。そのため、この柄は「マックリホース総督夫人柄」として知られていました。

 
 

「マックリホース総督夫人柄」とペニンシュラ香港で使われている「コーラル・クレスト」。目移り必至! アフタヌーンティーや中国茶用の蓋碗など、さまざまな形があります。

10年ほど前に、ペニンシュラ香港から、色を赤に変えた「コーラル・クレスト」の注文が入ったそう。手描きの柄に釉薬を塗り、店の奥にある大窯で、800℃で焼き上げる「釉上彩(ヤウションチョイ)」がこちらのメイン。

レンゲはおみやげにおすすめなアイテム。こちらはヴィンテージでHK$100以上しますが、大量生産品はHK$10から。

丈夫で使いやすく食卓を華やかに彩ってくれるので、まとめ買いしていく方が多いとか。日本への発送は航空便10日、船便30日ほど。支払いは現金のみ。暮らしを香港の思い出で飾ると同時に、香港の大切な文化遺産の維持を少し手助けできると思うと、嬉しくなりますね。

かつてヨーロッパへの輸出向けに先代が考案したという「カントンローズ」柄の見事なお皿。お店の歴史についてジョセフさんにうかがうと、いろいろ見せてくれますよ。

住所 九龍灣宏開道15號九龍灣工業中心3樓1-3室
電話 852-2796-1125
営業時間 9:00~17:00 無休
予算目安 小皿 HK$20~、レンゲHK$10~
WEB www.facebook.com/yuettungchinaworks/

とっておきのお茶と茶器を、香港の思い出としておうちに連れて帰って、忙しかった日の夜や休日に、ゆっくりティータイム・・・・・・なんて想像しただけで嬉しくなりませんか。大切な人への心のこもった贈り物にもできますね。香港でのこんなお買い物、きっとハマりますよ。

 

<書籍紹介>
『週末香港大人手帖』

甲斐美也子 著 1500円(税別)  講談社

12年暮らして虜になった香港の楽しさを伝えたかった甲斐さん、気が付けば在住ジャーナリストかつ大人気コーディネーターに! 4月5日発売『週末香港大人手帖』では、目と舌の肥えた大人だからこそ夢中になるお勧めスポットをたっぷり紹介しています。このガイドがあれば、おひとり旅/母娘旅/夫婦旅/いろんな旅……すべての計画がトントン拍子にカスタマイズ♪


(この記事は2019年3月時点の情報です)
撮影・文/甲斐美也子
 
 
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