1982年に、フランスのひとりの村長の呼びかけではじまった「フランスの最も美しい村」。
美しい景観や後世に伝えたい保護財産などを持つ小さな村にスポットを当て、「最も美しい村」として認定するというもの。現在は、ベルギー、カナダ(ケベック)、イタリア、スペイン、日本も参加し、世界的な広がりを見せています。
写真家・吉村和敏さんが、発祥の地である「フランスの最も美しい村」156村(2017年5月時点)を長期にわたって取材し、1冊にまとめたガイド写真集が『増補版 「フランスの最も美しい村」全踏破の旅』です。
フランスだけでなく、イタリア、ベルギーの「最も美しい村」を全踏破し、現在はスペインを取材中という吉村さん。「最も美しい村」には、ただ風光明媚なだけでない、そこに暮らす人々の何気ない生活の一コマにも魅力が溢れているといいます。日本で一番「最も美しい村」を訪れている吉村さんに、フランスの「最も美しい村」のなかでもおすすめの村を紹介していただきました。


中世美術の粋に触れる、渓谷の村


ロット渓谷にあるコンクは、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼街道にある重要な休憩地。ロマネスク様式の建物が多く、11~12世紀に建設されたアバシアル・サント・フォア教会では、繊細な彫刻に飾られた250の柱、教会入り口のタンパンに彫られた『最後の審判』、金と宝石で飾られた聖遺物像など、中世美術の粋に触れることができます。見どころはアバシアル・サント・フォア教会とその宝物、文化と観光センター、ヨーロッパ中世文明と芸術センターなど。

 


ロマネスク様式のアバシアル・サント・フォア教会

 

11~12世紀に建てられたロマネスク様式のアバシアル・サント・フォア教会は、12歳で殉教した聖女フォアに捧げられています。タンパン(入り口上にある装飾的な壁面)は『最後の審判』を表しており、キリストの周りには124体の人物像が刻まれています。

 

教会内部の250本の柱頭は、ステンドグラスから差し込む柔らかな光に彩られていました。

 

教会のタンパンを囲むフレームにあるユニークな彫刻。『最後の審判』を覗き込んでいます。

中世の世界に迷い込んだよう

 

コンクは巡礼路「ル・ピュイの道」の一部としてユネスコ世界遺産に登録されています。金銀細工の工房が多く、アクセサリーやナイフが売られていました。

 
 
 

コンクの村名はラテン語の「貝殻」に由来。観光案内所で村の簡単な地図をもらい歩き始めると、電線が一本もない路地が縦横無尽に伸びています。木組みを外壁に見せた家々がところ狭しと建ち並び、まるで中世の世界をさまよっているようでした。

<この記事で紹介した「最も美しい村」はここにあります>

 

コンク Conquesアヴェロン県/Aveyron

 


吉村 和敏(よしむら かずとし)
1967年、長野県松本市で生まれる。県立田川高校卒業後、東京の印刷会社で働く。退社後、1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビューする。以後、東京を拠点に世界各国、国内各地を巡る旅を続けながら撮影活動を行っている。2003年カナダメディア賞大賞受賞、2007年日本写真協会賞新人賞受賞、2015年東川賞特別作家賞受賞。
 

 

『増補版 「フランスの最も美しい村」 全踏破の旅』
著者 吉村 和敏 2800円(税別) 講談社


「最も美しい村」の発祥の国フランスがさらにパワーアップ!新たに10村を加え、吉村和敏が魅力あふれる村を歩き、撮る!
「こんなところに村があるのだろうか…」手探りで田舎道を走りながら、ふと不安になったとき、ブドウ畑の向こうに、中世の家並みがふいに姿を現した―好評を博した前作から8年、それぞれの美しい瞬間を撮影! 新登録された10村を加え、156村掲載。ガイド写真集Map付き。

『増補版 「フランスの最も美しい村」 全踏破の旅』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
講談社くらしの本はこちら>>

写真/吉村和敏

出典元:https://kurashinohon.jp/1038.html

・第1回「フランスへ行くなら絶対訪れたい「世界で最も美しい村」」はこちら>>

・第3回「重厚なゴシック建築は必見!仏バスク地方の「最も美しい村」」は4月16日公開予定です。
・第4回「ミニチュアのように可愛い、フランスの「最も美しい村」」は4月18日公開予定です。