純度200%の恋物語
優柔不断でポンコツで鈍感だけどニクめない春田と、エリートでソツがなくて家事も万能だけど自分の本音を隠しがちの牧。性格は正反対。でも、一緒に並ぶとパズルのピースみたいにフィット感があった。春田がいるから牧は牧でいられるし、牧がいるから春田は春田でいられる。そんなふたりが時にケンカをしながらも、お互いをなくてはならない存在として認めていくまでの日々に、たくさんの人が心を奪われた。それはもう正気を失うぐらい、どっぷりと。
この純度200%の恋物語は、良質なコメディという地層に覆われていて、地中深くに眠る恋のダイヤモンドに反応した人もいれば、そうじゃなかった人もいる。その差は、決してBL(ボーイズラブ)が好きかどうかだけではない。きっと、もっと普遍的なものだ。
たとえば、好きな人が自分のことを見てくれなくて苦しい想いをしたことがある人。
たとえば、相手を想うあまり、つい自分の好きよりも相手の幸せを優先してしまう人。
たとえば、誰かを好きになる気持ちなんて、もう何十年も味わっていない人。
「好き」というたった二文字の感情に振り回されて、自分のことが嫌いになったり、もう一度自分を信じてみようと思えたり。心の奥底に隠していた、とても厄介で、わずらわしくて、でも涙が出るぐらい眩しい気持ちを、春田と牧によって掘り起こされた。そんな人だけが突き落とされてしまったのだ、『おっさんずラブ』という底なし沼に。
だからこのドラマは人によって大きく感想が違うし、それがまた特別な熱狂を呼んでいるのだと思う。でも、どうかどちらのタイプも心配しないでほしい。『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』は、最高におバカなコメディとしてこのドラマを楽しんだ人も、最高にピュアなラブストーリーとしてこのドラマを愛した人も、どちらも両手を広げて抱きしめてくれる懐の広い映画だ。
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