森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館などに勤務、フリーのキュレーターを経て小説家として活躍する原田マハさん。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』など数多くのアート小説を世に生み出しています。そんな原田マハさんが小説家として初のアート展をプロデュース! しかも、舞台は世界遺産・清水寺、会期は8日間限定。大規模かつ大胆な試みに原田さんがご自身に課した型破りな「挑戦」と、皆さんへ託す「挑戦」とは……。

世界中から美術館関係者が集まるICOM(国際博物館会議)の世界大会に合わせて開催される「CONTACT つなぐ・むすぶ日本と世界のアート展」(9月1日~8日)


日本と世界のアートとアーティスト
どのように影響を受け、影響を与えたのか


世界中から美術関係者が集まる大規模な国際会議「ICOM(アイコム/国際博物館会議)」が今年、日本で初めて開催されることとなりました。「ICOM京都大会2019開催」を記念して、展開されるのが小説家・原田マハさん監修の「CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート展」です。

会場となるのは、京都の世界遺産・清水寺。会期はわずか8日間(2019年9月1日から9月8日)ですが、出展する作家は25名、巨匠から新進気鋭のアーティストまで幅広く、マティス、東山魁夷、森村泰昌、加藤泉などに加え、宮沢賢治、川端康成、手塚治虫、竹宮恵子と文学、映画、マンガとジャンルの垣根を超えた展示が見どころ! 清水寺1200年の歴史の中でも、こうした複数ジャンルの展示は初めてのことだといいます。

日本文化へ積極的に触れようとした海外のアーティストたちと、世界的な日本のアーティストを並べて展示することで「世界と日本のアートがどういう風につながりあって発展していったのか」を紐解くユニークな試みです。

清水寺 西門では加藤泉の新作インスタレーションが展示されます。チケットなしで閲覧可能です。加藤泉《無題》2019年(本展のための特別制作) 布、革、アクリル絵具、パステル、ステンレススチール、アルミニウム、鉄、刺繍、石、 リトグラフ ©️2019 Izumi Kato
会場内では、アーティスト同士の接点や影響を並べて展示。(上)川端康成「かささぎ」1963年と(下)東山魁夷《無題》1963年 個人蔵



文化財は人の目に触れて価値を増す
お寺は日本のミュージアムの原点

展覧会開催の3週間前、記者会見に登壇する原田マハさん。「従来こうした発表はもっと前に行われるものですが、信じがたいスケジュールで仕上げており、現在も急ピッチで準備が進められています」と語りました。

今回の展覧会の目的として、世界の“ミュージアムのサミット”とも呼べる大きな会議で、世界中から訪れる人々に日本や京都の素晴らしさを体感してもらうこと、ICOMの優れたコンセプトと活動を多くの人に知ってもらうことなどを挙げた原田さん。さらに、興味深いお寺とミュージアムのルーツについて解説してくださいました。

「古来より京都のお寺は、文化財を保護し、人々に見せてくれる展覧会の原型のような役割を担っていました。寺院は日本のミュージアムのオリジンとも言えます。仏師や絵師たちのサポートや、作品の保全・保護の役割も。これは京都国立博物館の佐々木丞平館長がおっしゃっていたことですが、寺院は保有する美術品、文化財を年に何回か虫干しをする際に、あえて人の目に触れるところで虫干しをするんですね。これを“目通し、風通し”というそうです。非常に美しい言葉です。人の目に触れさせることで、文化財を大切にして、次の世代へ伝えていこうと思われるわけです。今回の展覧会も“目通し”の意味合いもあります」

清水寺という大舞台を縦横無尽に使った展開も見どころ。西門や馬駐に加え、通常は非公開の成就院や経堂の公開されるという。写真は成就院の庭園。


キャプションも解説も一切なし!
原田マハの型破りな「7つの挑戦」


今回の展覧会にあたり、原田マハさん自身が自分に課した7つの挑戦があると語りました。

1 リミットは8日間
2 会場は世界遺産の清水寺
3 美術、マンガ、映画、文学のトランスジャンル
4 キャプションと解説を一切置かない
5 朝7時から開演する
6 書き下ろし小説と連動
7 解説を200文字で書き下ろし

本展を舞台に書き下ろされた小説『20 CONTACTS 消えない星々との短い接触』(幻冬舎)は、原田マハさん自身「私」がアンリ・マティス、手塚治虫ら20人の巨匠たちと接触するというユニークな設定で描かれています。

アートに触れること、アーティストへアプローチすることを「コンタクトする」と度々表現した原田さん。今回、作品へのキャプションや解説の展示を一切しないことについて、「私はよくアート作品と対峙する際、会話していることに気づきます。作品はインターフェイス。その向こう側にいるアーティストとコンタクトしているんです」。来場される皆さんにも「まずは自分の心の目で見て、体感することによって、アートの向こう側にいるアーティストとコンタクトしてほしい」と語りました。

とはいえ、解説なしに“巨匠たちと会話なんてできるか不安……”という方も多くいらっしゃると思います。ご心配なく! 会場では『20 CONTACTS 消えない星々との短い接触』の一部抜粋と原田マハさんによる200文字ぴったりの解説が掲載されたタブロイド紙が無料配布されるそう。でも「まずは何も見ずにコンタクトして」と原田さん。

「私の展示は、深く狭く掘り下げるのではなく“展開型”なんです。小説が一つのテーマから物語がどんどん展開していくように、箱がどんどん開いていく感覚です。バラバラだった点と点が繋がって、面になり、それが最後は物語になる感覚をぜひ味わってください」。

会期中には「コンタクトトーク」と名付けられたトークイベントも。竹中直人さん、山田洋次監督らと原田さんの対談が予定されています。

朝7時からオープンしているので、通勤前や前日最終便入りでも“コンタクト可能”。会期中、二度、三度と訪れたくなりそうですね。

ちなみに、原田マハさんもメンバーの一人である「ICOM」には、美術関係者でなくても「賛助会員」としてメンバーになることができます。ICOM会員の博物館や美術館などへの無料または割引入場、優先入場などの優待が受けられるそうです。ミュージアム好きの方はぜひチェックしてみてください。

入会のご案内はこちら>>

<イベント詳細>「CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート展」
会期:2019年9月1日(日)~ 9月8日(日) ※会期中無休
開催時間:7時~18時(最終入場は17 時)
会場:清水寺(京都市東山区清水1丁目294)成就院、経堂、西門、馬駐
入場料:大人1,800円、子供(小学生以下)無料
    *モーニングチケット(7時~9時入場)大人1,600円、子供(小学生以下)無料
    *トークイベントとのセットチケット5,000円
前売券:公式サイト、「チケットぴあ」にて発売中(当日券あり)

主催:「CONTACT/CONNECT展」実行委員会、京都新聞、BS日テレ、anonyme

お問い合わせ:「CONTACT/CONNECT展」実行委員会 事務局
E-mail: info@contact2019.com
TEL: 075-351-9915(チケット販売窓口:株式会社のぞみ内)
*電話応対時間:10:00-18:00 *土日祝・お盆休暇除く

CONTACT展公式ホームページ http://www.contact2019.com
撮影・取材・文/川端里恵(編集部)