愛妻が若い恋人と「密会」していると知り、“108人の女を抱く”という暴走を始める男の悲喜劇を描いた『108~海馬五郎の復讐と冒険~』。劇作家の松尾スズキさんが監督、脚本、主演を務める作品は、特に40代前後の愛と夫婦とセックスをめぐる思いを、笑いと切なさとともに描いて話題を呼んでいます。今回は、松尾さん演じる主人公・海馬五郎の元妻役で出演している映画コメンテーターLiLiCoさんが、『108』と併せて観たいおすすめR18映画をナビゲート。大人だから感じられるエロティックな世界とは?

 

爆笑しながら夫婦の愛のあり方を思う『108 海馬五郎の復讐と冒険』


妻・綾子がダンサーに熱を上げ、その逢引の様子をフェイスブックに投稿しているのを知った劇作家の海馬五郎。全国ツアーを追いかけて家を出た妻に逆上した海馬は、離婚したら妻に奪われるであろう財産分与分1000万円を使って、妻の投稿が獲得した「いいね!」の数ーー108人の女たちと関係するというとんでもない復讐を実行し始める。

ⓒ2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会

「さまざまな見知らぬ女たちと“愛のないセックス”を繰り広げるというお話は、男性向けの作品のようですが、実は海馬と関係する女たちのエゴも描かれているので、女性が見ても心の底から笑えると思います。海馬五郎を演じる松尾さんが女性と絡み合うシーンがこれでもかと登場しますが、その演技もいちいち爆笑です。

 

結婚して10年20年がたつと、新婚のころとはビジュアルも違ってくるし、慣れもあるけれど、やっぱり夫婦は互いに愛し合いたいと思っていると思うんですよね。日本ではまだまだセックスを大っぴらに話せる空気はないけれど、男性と女性が全く同じ方向を目指す数少ない共同作業だし、この夫婦がしているように自分の欲望をオープンにしたほうがいいなと思います」

LiLiCoさんのおすすめ「R18映画」①​
最高にエロティックなセックスシーン『ラスト、コーション』


第二次大戦中、日本占領下の香港で、抗日闘争に身を投じてゆく大学生のチアチーは、日本の特務機関の幹部・イーの暗殺をもくろみ失敗。3年後上海で再びスパイとしてイーに近づいたチアチーは、作戦の一環として彼の愛人に。だが苛烈な緊張と孤独の中で激しいセックスを重ねる二人の間には、愛にも似た奇妙な感情が生まれ始め……。

「これまで見た映画の中でも、1、2を争う生々しくエロティックな、こうでないと!と思わせるセックスシーン。イー役のトニー・レオンもそうですが、チアチーを演じたタン・ウェイの思い切りの良さは本当にすごい。これぞ女優!と思わせる肝の座り方と、美しさにうっとりしました」


LiLiCoさんのおすすめ「R18映画」②
男性の素敵な裸に見惚れる『ハウスメイド』


ある大金持ちの家に住み込みのメイドとして入った貧しい女性ウニは、ある晩、自分の部屋を訪れた主人フンと関係を持つ。彼女の妊娠を察知した女中頭は、臨月の妻ヘラとその母親に報告。ウニの流産を目論むが失敗、大金を積んで堕胎を迫るが……。

「欲しいものは手に入れて当然と思っている夫が、全裸で大の字になって臨月の妻に奉仕させる、それを真上からのカメラでとらえたシーンがすごい印象的でした。メイドの部屋にも当然のように、夜中に、ワイングラス片手に上裸で現れます(笑)。演じるイ・ジョンジェさんは、キレッキレの細マッチョで脱ぎまくり。女性だっていくつになっても、男性の素敵な裸って見たいですよね」

LiLiCoさんのおすすめ「R18映画」③
女同士の大胆かつリアルな欲望を描く『アデル、ブルーは熱い色』


教師を目指す高校生アデルは、運命的に出会った青い髪の画家エマに一目惚れし、やがて愛し合うように。数年後、教師になったアデルは、エマのミューズとして共に暮らし、幸せな毎日を送っていた。だがある出来事をきっかけに、二人の気持ちは徐々にすれ違ってゆく。この映画でデビューしたヒロイン、アデル・エグザルコプロスが、ボンドガールにもなったレア・セドゥを相手に、その豊満な肉体で体当たりの演技を見せる。

「女性同士の大胆かつリアルなセックスシーンが話題となった作品。アジア映画の物語性のあるセックスシーンとは異なる、欲望!という感じがフランスらしくて好きです」

 

LiLiCo 1970年生まれ、スウェーデン・ストックホルム出身。 18歳で来日、1989年から芸能活動スタート。TBS「王様のブランチ」に映画コメンテーターとして出演、フジテレビ「ノンストップ!」、NHKBS1「ラン×スマ」(ナレーション)、J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」他出演番組も多数。アニメの声優や女優など、マルチに活躍する映画コメンテーター。ファッションにも意欲的に取り組み、バッグやジュエリーのデザイン、プロデュースも手掛ける。映画『108 海馬五郎の復讐と冒険』には主人公・海馬五郎の元妻・エイドリアン役で出演。新刊『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』(講談社)も好評発売中。

<映画紹介>
『108~海馬五郎の復讐と冒険~』
10月25日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
 

出演:松尾スズキ 中山美穂
大東駿介 土居志央梨 栗原類 LiLiCo 福本清三 乾直樹 宍戸美和公 堀田真由
村杉蝉之介 オクイシュージ / 岩井秀人 / 酒井若菜 坂井真紀 秋山菜津子
監督・脚本:松尾スズキ
主題歌:星野源「夜のボート」(Speedstar Records)
制作プロダクション:パイプライン 配給・宣伝:ファントム・フィルム
製作:「108〜海馬五郎の復讐と冒険〜」製作委員会(バップ/ファントム・フィルム/大人計画/パイプライン)
(C)2019「108〜海馬五郎の復讐と冒険〜」製作委員会

撮影/塚田亮平
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)