夏の終わりに、急に思った。スマートフォンを買うのだ!人生初の。パリ生活10年目のアニバーサリーイヤー、そしてこれから始まる新しい10年に向けての、自分へのご褒美にプレゼントを買うのだ。確実に新しい何かが始まろうとしているこの今、この一瞬のタイミングで買うのだ!と。

冒頭の写真はパリ、サンジェルマン・デ・プレのアップル。広々としてスタイリッシュ。天井高く、グリーンがあって、まるで居心地の良い美術館のようだ。毎日この脇を通って出勤するのだが、恐れ多くて足を踏み入れた事は無かった。

新機種の発売日に、怖ず怖ずとアップルストアのドアを開ける。いや、正確には、いかついドアマンが開けてくれた。ボンジュール、マダム。Bien venu chez Apple ! まずは第一関門クリア。ああ、願わくば感じの良い店員さんに当たります様に。スマートフォンを持った事が無い人なんて、今のご時世パリには珍しいだろう。ましてやアップルにお勤めの最先端の人達にとっては、私はクロマニョン人並に時代に取り残された存在に違いない。バカにされなきゃいいけれど。

担当のサラさん。「写真は苦手なのよワタシ!」と、はにかんで、シャッターチャンスを外したけれど、あれ、何だか良い写真だ。

「サラさん、私ね、人生で初めてのスマートフォンを買いに来たの。機種はバッチリ決めて来たんだけれど、それ以外は何も分からないから色々教えて下さいね。」
若く爽やかな彼女は、私が出した古いガラケーを見て、バカにするどころか、感動していた。
「マダム!これ、今やコレクターアイテムですよ!わぁ、ウォークマンが内蔵されているのよね、コレ。懐かしいなぁ。小さくて可愛い~!」

左が愛用のソニーエリクソンW205。パリ生活初日から10年間使った携帯電話。

私達の近くに居た他の販売員達も集まって来て、私の小さなソニーエリクソンW205に目を輝かせていた。そうこうしているうちに、注文商品のiPhone11 Pro Max ゴールドが奥から恭しくやってくる。

「Make a wish Madame ! マダム、願い事をかけて!」
ボックスを開けようとする私に、サラさんが言った。願いは沢山あるようで、いつもひとつだ。

これから、仕事がもっともっとワールドワイドになるだろう。食とファッション以外の分野にも係っていく様な気がする。そして沢山の旅と、素敵な恋もするだろうな。この新しい相棒が、良い時も悪い時も、私の良き相談相手になるに違いない。これから沢山沢山宜しくね。

そして、可愛い可愛いソニーエリクソン君。嬉しい時も悲しい時も、いつも君が一緒だったよね。小さな体で、心躍る会話、胸を打つメールの数々を配達してくれた頑張り屋さん。月間4.99ユーロで10年間良く働いてくれたね。どうも有難う。人々が何と言おうと、私は君が大好きだったよ。

 

ブティックのみんなの前で披露。どう?似合う?誇らしいワタクシ。エヘヘ。問題は、ちゃんと使いこなせるかどうかだな。猫に小判にならない様に、ちゃんと勉強しよっと!