世界的巨匠の名作が揃うルーヴル美術館を攻略するための本『マンガでわかるルーヴル美術館の見かた』の編集・ライティングを担当した私、“小鳥”こと「青い小鳥アート研究室」が、独断と偏見で選んだ大好きな作品をご紹介します。

可愛くてエロティック。ロココの「ロ」の字はロリータの「ロ」(ウソです)


過去の様々な時代の絵画を見ていると、「もしこの画家が今の時代に生まれていたら、マンガ家になってただろうな~」とか「映画監督になってただろうな~」と思うことがあります。特にバロックの後にくるロココの時代の画家たち、例えば王家のお抱え画家だったフランソワ・ブーシェなんかは――。

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『ディアナの水浴』。狩りの女神ディアナのお約束は「月」に「弓矢」。この時代、裸婦を書く理由づけとして神話の女神が使われていました。あどけない顔と肉感的な身体を持つブーシェの裸婦像は大人気。アイドルのヌードグラビアみたいな感じでしょうか。

ーー「アキバ系のマンガ家になってそうな……」なーんて思います。
そんな中、ロココの可愛さを描きながら、詩情と上品さを保った画家がヴァトーです。小鳥が思うに、ブーシェが少年マンガだとすれば、ヴァトーは少女マンガ。この『シテール島の巡礼』なんて、ほんと少女マンガそのまんま。

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サイトの画像だとちょっと見えないのですが、一番左の男性の方には、キューピッドの矢の刺さったハートなんかが描かれていたりして。甘く儚く、ふわふわとした綿菓子のような作品。

絵は恋愛成就の島「シテール島」の船着き場で、恋に戯れる8組のカップルを描いている――ようにみえて左の3組は、左から「口説いて」→「手を取り」→「腰を抱いてデートへ」みたいに描かれている「異時同図」だという説も。だとしたら、つまりアニメっぽい発想で描かれているってことで、なんかすごいわ

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こちらベルリンにある別バージョン。よりコテコテの可愛さ。

かと思えば、ロココ後期を代表するフラゴナールは、貴族たちがベッドルームに飾るエロティックな「閨房画」を多く手掛けた画家として知られています。嫌がる女性を搔き口説き、部屋にかんぬきをかける男性……という場面を描いた、この『かんぬき』もそんな1枚。

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テーブルに転がるリンゴは「罪の果実」、右下の隅に転がる花瓶と花は「女性器」の、タイトルのかんぬきは「男性器」の、それぞれ象徴でもあります。

男女は置いといて、小鳥が見ていただきたいのはベッドの方です。とがった枕の両端を乳房に、中央に描かれた角を膝に見立てれば、ベッドは赤い布で局部を隠した「女性の裸体」に。そのほかにも象徴的なものが転がり、絵は全体としてセックスを暗喩しているのです……放蕩三昧だったロココという時代を象徴するような作品です。

アイコン画像

青い小鳥アート研究室

アートを中心に、カルチャー全般を手掛ける、編集、ライティングユニット。フランス滞在経験を持つ編集者と、長年カルチャー分野の原稿執筆に関わるライターを中心に、書籍、雑誌記事の制作に携わる。アートってなんだかちょっと難しい、自由な見方をしたら怒られそう、敷居が高い……そんな人たちにも面白く、分かりやすくをモットーにお届けしますー。誠文堂新光社より『マンガでわかるルーヴル美術館の見かた』が発売中。来年にかけて、同シリーズのオルセー美術館、ロンドンナショナルギャラリーが刊行予定です。

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<新刊紹介>
『マンガでわかるルーヴル美術館の見かた: 西洋絵画がもっと愉しくなる!』


ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、ドラクロワの『7月28日 民衆を導く自由の女神』をはじめ、フェルメール、レンブラント、ラ・トゥール、カラヴァッジオといった世界的巨匠の名作がずらりとそろうルーヴル美術館。

本書は、「巨大すぎて、何を観たらよいかわからない」「作品も画家も知っているけれど詳しくはない」「有名な作品数点だけ観て、あとは流して観ていた」という方におすすめのルーヴルの入門書です。

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観るのがもっと楽しくなる、絵に込められた仕掛けやメッセージが満載!
フランス旅行でルーヴルへ足を運ぶ際の予習復習や展覧会のお供に、また西洋美術史をざっくり学ぶのにも最適な一冊です。

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前回記事「北方ルネサンスの細かすぎて伝わらないこだわりに萌える【西洋絵画をもっと面白く】」はこちら>>