芥川賞に又吉直樹さんの『火花』が選ばれ、150万部を突破したとニュースになっていますね。FRaUの8月号では、女性が選ぶ女性のための文芸大賞「第3回フラウ文芸大賞」を発表しております。フラウ文芸大賞は、フラウ世代の女子書店員とコラムニストの山崎まどかさん、フリーライター瀧井朝世さん、書評家の藤田香織さんという本読みのプロが、直近1年間に発売された本の中から、今もっとも女性におすすめしたい本を選ぶ賞です。

 

ノミネートされた全作品はFRaUのサイトでも公開されていますのでぜひチェックしてみてください。

第3回フラウ文芸大賞 全ノミネート作品を一挙公開!

候補作の中から、ミモレ読者の方にとくにおすすめしたい2作品をご紹介したいと思います。

私の個人的イチオシ、柚木麻子さんの『ナイルパーチの女子会』。

 

主人公は女二人。大手商社に勤める栄利子と専業主婦の翔子。栄利子は翔子が匿名で書いているブログをチェックするのが楽しみだった。あるとき二人は偶然出会い、意気投合して親友になるのですが、深入りすればするほど違う面が見えてきてしまって……。
ナイルパーチは、淡白な白身の食用魚なのですが、実は他の種を食べ尽くし、生態系を壊してしまう凶暴性があるそう。淡白に見えて相手を食い尽くしてしまう凶暴性をもつのはどっち?
怖いけれど読むのをやめられない。「女ともだちって難しいよね~」の一言では片付けられない“立場の違い”によって生まれる“女の差異”に鋭く迫った作品です。
私はこれを読んで、<もしかして、私も誰かのナイルパーチ?>と思い怖くなったのでした。

もうひとつは窪美澄さんの『水やりはいつも深夜だけど』。

 

窪美澄さんは最近私にとって「出たらなんでも買う」作家さんのひとりになっています。『ふがいない僕は空を見た』から読み始めて、『晴天の迷いクジラ』『アニバーサリー』『雨のなまえ』『よるのふくらみ』といずれも心揺さぶれる力の強い小説ばかり。

『水やりはいつも~』は、同じ幼稚園に通わせる家々の物語を描いた5つの連作短編集。高級住宅街やお受験幼稚園が舞台とあれば、最近のドラマ『マザーゲーム』や桐野夏生さんの『ハピネス』なども思い浮かびますね。描かれているのは、セレブブログを更新し続けることに疲れてきた主婦、仕事が忙しく子供になかなか時間を割けず家族とギクシャクする父親……などなど。ただ揶揄的に取り上げるのではなく、それぞれの事情や悩みが繊細に描かれており、5つの家族のどれかが自分の境遇にも当てはまるのではないかと思います。
はっきりとしたハッピーエンドではないけど、それぞれの救いが見えるラストも素晴らしいです。